ジャンヌ・ダルク

 PSPでは初めてと言っていい、正統派のS・RPG。

 歴史をバックグラウンドにしているだけに、説教がましかったり、悪い意味でリアルだったりなど、懸念していたが、その辺はうまいこと解釈して、改ざんしている感じで好感持てる。ゲーム序盤であっさりオルレアンを解放して、この先どうなるのかと思ったが、色々と盛り上げる策があった。(ネタバレ反転→)リアンがジャンヌの代わりに火あぶりになるところとか、その後の展開とか、自然に「魔王」とかの設定を百年戦争の歴史に絡めてあって、感心。

 秀逸なのは、ゲームバランス。タクティクスオウガ以来では無かろうか。パワープレイにならず、特定ユニット依存にならず、最後までバランス良く、気を抜くと危ないバランスにしてある(勿論フリーマップでレベルを上げすぎるとバランスは崩れるが、逆に言うとシミュレーションが不得手な人のための救済もしっかりしているということ)。これは素直に感心。サモンナイト始め、売れているS・RPGスタッフに、ジャンヌ・ダルクチームの爪の垢を煎じて飲ませたい。
 だめな点もある。ストーリー全体としては良くできているのだが、途中途中の、物語を大きく動かすシチュエーションが唐突過ぎる印象は否めないし、それぞれのイベントで、ネタ振りが弱いので、オチが生きてこない。更に致命的なのは、こういうゲームにかかわらずキャラクターの掘り下げが足らない/下手。もう少しこの辺しっかりしていれば、S・PRG史ではタクティクス・オウガの次位くらいに挙げても良いゲームなのだが。

 思うに、現代ゲームに於いて、アニメーションや音声というファクターが、ゲームデザイナー/ゲームライターの表現能力を貶めること、もう取り返しのつかないところまで来ているのではないか。ゲームに限らず、社会全体に言えることだが、技術に恵まれた世界というのは決して人間の理性/知性/想像力/創造力にとって、良い世界ではない。送り手は、情報量の多い、それでいて奥の浅いアニメに逃げ、キャラクターの表現を音声・演技に依存し、結果、行間でキャラクターを魅せる能力というの身に付かない。受け手も同様に、それらの要素を自然に与えられ、何の抵抗もなく享受する結果、文字情報やドット絵のようなモノから、「描画されているモノの先・裏にある世界」をイメージして、脳内に構築する能力に欠けている。それが双方エスカレートし、ゲーム業界はかなりジリ貧になってしまっている。分業化が進み、トータルクリエイターみたいな人間は希少種になってしまった。結局、職人なのだ。職人というと聞こえは良いが、自分が食わせたいネタではなく、客の喜ぶモノだけを握る寿司屋は機械でも良いのではないかという話だ。正直、先が見えている感もある。寂しいことだけど。逆戻りはできないのだよなあ……。

 ともかく、久々に素直に楽しめるS・RPGを、しかもPSPという死に体のハードで出してくれたことに感謝。同時に、PSPユーザーで、この手のゲームに抵抗無い方は是非買うことをお奨めしたい。アニメはスキップできるので安心です?

 評価は9.5点、と言いたいところだが、アニメへの依存+キャラ描写の不足で9点にしておきます。

 次はサモンナイト4

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