剣と魔法と学園モノ2

 前作が非常に面白かったので、わくわくして買いました。クリアして、その後のダンジョン制覇までちゃんとやりました。以下、ネタバレ…でもないけど、読みたい人だけ読めばいいので折り返しておきます。今から買いたいという人は、逆に見て欲しいかも。まあ、私の主観ですけどね。


 結論から言うと、そつなく良くできています。前作がリメイクだったのに対し、今回はオリジナルなのかな? 原型がWIZARDRYだった前作に対し、今回は普通の3DダンジョンRPG。呪文使用回数の制限が無くなりMP制に。アイテム鑑定も不要で、最初から何だか分かるようになった。

 この2点。昨今のユーザー向けの「改善」としては大変素直、と言うか分かりやすい。お陰で難易度が格段に下がった。その分、ワクワク感が限りなくゼロになってしまった。

 我々年代にWIZを美化する傾向があることは否定しない。しかし、ユーザーの意見を聞いて、プレイアビリティを向上させることは、特徴の鈍化に繋がりやすく、平均化を招く。平均化されたゲームは、誰からも文句を言われない代わりに、誰の心にも残らない。平均的な美人を作ると、極めて平凡な顔になると言うが、ゲーム…いやゲームに限らず、創作物は何でも同じことが言える。

 WIZの名作たる所以は、一寸先は闇のサドンデス制に尽きる。それを強調しているのが、呪文の使用回数制限・敵や罠によるデストラップ・アイテム鑑定の不便さによるワクワク感。前作は、リメイク故に、WIZの武器を全て持っていた。持っていたまま、PSPサイズにジャストフィットなボリューム感とそこそこのキャラクター性、デザインの可愛さがあったから、良かった。今回は、一部のデストラップ(魔法無効+浮遊していないと死んでしまう水濠?くらい)は健在だったものの、最初から最後までほとんど何の危機感もなく順調にクリアできてしまった。

 今のユーザーがそういうモノを望んでいる傾向にあることは否定できない。今のユーザーにとって「解けない」=「ゲームが悪い」からだ。そこに「本当にバランスが悪い」「自分の試行錯誤/想像力が足りない」という冷静なジャッジは存在しない。作り手としては、とても怖い。分かる。分かるが、そこの評価を避けていった先には未来はない。苦しくても、そこに踏みとどまって、「ユーザーとゲームを共有する」ことをしなければ、いずれ、理解あるベテランゲーマーはメーカーを食わせるに足る人数が保証されないほど少なくなり、メーカーは潰れてしまうのだ。

 60点を取りに行って、60点を付けるゲームになってしまった。それがとても残念。開発スタッフは、変えるべき所と、変えてはいけないところが理解できていなかったと言わざるを得ない。楽な方に逃げたと言わざるを得ない。特徴は長所でもあり、短所でもある。そこで、人は好き嫌いを判断して、購買材料にする。特徴のないゲームは、嫌われない代わりに、選ばれない。余程の3Dダンジョン好きか、PSPでRPGに飢えている人間じゃない限り、次回作は買わないだろう。そして一度鈍くなった牙はもう研ぎ直せない。生え替わるのを待つしかない。それはメーカーにも、ユーザーにも言える。

 種族専用クラスが増えたのは良いが、ほとんど役に立たないもの残念。世界樹を見てご覧? 特定職業が居ることによるクエスト/戦闘の有利/不利が明確にあり、常にユーザーは試行錯誤を求められる。このゲームには、残念なくらい、試行錯誤の必要がない。そしてワクワク感もない。頭を使わず、ワクワクもしないダンジョンRPGを何と表すればいいか。私は、私の大嫌いな言葉を使わざるを得ない。「作業」だと。

 「不便だから面白い」という感覚は、古今東西全てのゲームを下支えする、極めた大事な要素。作り手と、遊び手が、ここを否定したら、ゲームは終わる。必要なのは「不便さを楽しんで貰うための雰囲気作り/システム」であって、不便なモノを取り除くことではない。スタッフのやったことは、赤ん坊が怪我をしないよう、部屋の中の危険なモノを全て取り払うことだった。その結果、赤ん坊のための知育に繋がる遊び道具は全く無くなってしまった。無いし、1種類しかなくなってしまった。「不便さ」をゲームに入れるには、作り手と客との信頼関係が必要になる。「ウチの客は、そのくらい大人だから」という。このゲームを作った人たちは、客のことを全く信じていないようだ。それが如実に分かる中身だった。

 ゲーム業界は不況だ、不況だと言うが、軽いのはユーザーの財布ではなく、作り手の頭と心なのだと改めて感じてしまった。面白かったゲームがつまらなくなるのは、悲しい。お金を払って、悲しい思いをするのは辛い。それでも、私はゲームが好きなので、お金を払い続ける。

 この人達の作ったモノは、もう買わないと思うけどね。

 採点は4.5点(10点満点)。前作は8.5。続編が前作を上回る、と言うケースは稀ですが、逆にここまで落ちることはほとんど無いです。だってなーーーーんも、無いんだもん。このゲーム。これなら、ちょっと気の利いた人なら「ツクール」で作れると思うよ。クリエイティビティを感じない。まあ、前作をやってない人でWIZを知らない人は6点で良いと思いますよ。60点取りに言ったゲームですから、60点の評価が相応しい。

 というわけで、酷く落胆した私は、敢えて「今国民が向き合ってるゲームに触れよう」ってことで、ドラクエ9を買ってきました。ぱっと見、DSドラクエモンスターズの焼き直しっぽいので、「天下のドラゴンクエスト」という過度な期待はせず、モンスターズの新作くらいのテンションでへろっと始めてみます。

当ブログの一口馬主関連記事の一部はキャロットクラブさまより許可をいただき転載しております。記事の再引用、転載はご遠慮願います。