きりた史ベスト10RPG・5位

 そんなわけで自宅ネット開通記念。5位。

ファイナルファンタジー6

ファイナルファンタジー6

 ベスト10にFFかドラクエのどれかを入れようと思い、選考したところ、このゲーム、FF7、ドラクエ2が残った。ドラクエ2は幼少期のため、横の検討が難しく、最終的にFF6と7で悩んだが、思い入れの差でこちらに。

 このゲームに関しては、個人的に強い思い入れがあるので、少々昔話に脱線することをお許しいただきたい。

 大学1年の時。高校の教師にも勧められ(何故か私は英語と国語の成績だけは全く勉強しなくても良かった。好きな科目は世界史だったんだけど)、外語学科のある大学に進学したのだが、周りにいるのは、親元を離れ、自由を満喫する子供ばかり。遊び相手としては最高の連中だったが、皆何のビジョンもなく、惰性で生きている感じが強烈にした。自分もそうして惰性で通訳か添乗員にでもなるんだなあ、と思いつつ、常に違和感を感じていた。

 そもそも、私は本当にやりたい仕事がずっとあった。ゲーム業界に入ること。本当はゲームじゃなくても良かったのだけれど、絵が好きで、音楽が好きで、本を読むのが好きな私は、それらの要素が全部入ったメディアに関わりたかった。親に反対され、ゲーム関係の専門学校には行かなかったのだが、そのこともずっと棘のように意識の何処かに刺さり続けていた。

 そんなうちにFF6を買った私は、何故か異常にこのゲームにハマリ、久々に徹夜でゲームをプレイした。このゲームの世界から抜けるのが惜しく、大学の講義も飛ばし、バイト(当時、箱根の某有名美術館でバイトしてた)も無断で休んだ。そのままほとんど寝食を忘れる勢いでゲームをプレイし続けた。今までどんなに楽しいゲームでも、そんなことはなかったので、自分でも驚いた。

 クリアした時、自分の中にあるのは「やっぱりゲームを仕事にしたい」ということだった。とりあえず、バイトを辞めた。ゲーム雑誌を買い漁って、新しいバイトを探し、前の会社に潜り込んだ。自分なりに「親も裏切った。もう帰る場所はない」と追い込んで、1月後には大学も辞め、ガムシャラに働いて……。まあ、気付けば13年も続いている「趣味」のような仕事。何が引き金を引くか、というタイミングで出会ったのだとも思うが、とにかく私はこのゲームで人生が変わった。今となっては「あの時そのまま大学に通ってたら」と考えることすらない。そんなわけで、FF6には感謝も込めてこの順位にしてみた。このゲームを思い出す時、仕事の原典としていつも私の中ではキラキラと褪せない輝きを放っている。個人的名作。

 さて。ゲームの中身の話。FF6と7はRPGとしてのFFとエンタテイメントとしてのFFの過渡期に生まれた作品と位置づけている。どちらも、ストーリーの読み甲斐とゲームとしてのRPGのやり甲斐がとても良いバランスでミックスされている。5までのFFは「キャラクターの少し立ったゲーム」だし、8以降は個人的には「RPGであることを軽視した金満エンタテイメント」だ(9は惜しかった…)。

 FFは6で大きく進化した。それまでは「クリスタルという共通テーマのあるRPG」で、RPGとしてはドラクエを超え得ない感じがあった。FF6でスクエアは「魅せる」ことに力を入れた。明確に主人公が存在せず、操作キャラクターはみんなエース級というか、しっかりバックボーンがあり、掘り下げも見せ場もある。「勇者システム」を軸にしたドラクエに対し、いくらFFが主人公をヒーローにしても、勝ち得なかったわけだが、その結果、ドラクエとは完全に別の進歩を始め、(賛否はありながらも)シネマティックなRPG、主人公の居ない世界そのもののドラマ性を見る/見せることに力を入れたことで、キャラクター性とストーリーの部分でドラクエを大きく凌駕し、ナンバーワンの座を確立していった。今、ノスタルジーとしてのドラクエが見直され、肥大化しすぎたFFが自滅の道を歩んでる感のある中、RPGとして見直すべき原典は6にあるのではないだろうか。煩雑すぎないシステムで、過剰すぎない演出。マシンの能力限界がもたらした「奇跡のバランス」がFF6にはあった。

 クリスタル一辺倒から脱却(逸脱)し、「魔石」と「機械文明」を軸に置いたストーリーは楽しかった。世界観が様々な名シーンにリンクしているのも素晴らしい。セリスでシドに毒魚を食わせて殺してしまったのも良い思い出だw オペラのシーンや飛空挺のチェイスも良かった。亡国の鉄道シーンも良かった。

 なによりRPGとしてのバランス(難易度と緊張感)が素晴らしい。総合エンタテイメントとしてはFF7の方が上だと思うが、あちらはRPGとしては結構煩雑だった。マテリアシステムは楽しかったけど、ゲーム的に過ぎて、ストーリーに浸る邪魔にもなっていた。

 音楽もFFシリーズの中では一番ではないかと思う。フィールドの曲が特に絶品。RPGでフィールド曲と街の曲はとても大事。FF6はそこがとても良い。

 まあ、このゲームに関しては、上に書いたような「思い出」がかなり美化している部分もある。でもFF6がこの順位に入るのはとても「私らしい」と思うわけだ。これもDSでせめて3並のクオリティでリメイクして欲しい。ミンサガくらいやってくれたら最高だけど、それは無理だろうし…。まあ、リメイクされなくても、記憶の中で名作の地位を保ち続けてるので、十分なんですけどね。

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