テイルズオブヴェスペリア

 クリア。以下ネタバレ有りの感想。

 いやあ、面白かった! テイルズシリーズでは、初作とシンフォニア・アビスがお気に入り。特にアビス。同じ3作を好きな友人が「絶対やれ」と薦めてきて数ヶ月。本体はどのみちスターオーシャンのために購入決定だったので、ちょっと早めに買ってみました。正解だったな。値段的にもいいタイミングだったし。とりあえず1周クリアして、EXnewゲームでちょろちょろ。全キャラレベル200、アイテム・モンスター図鑑コンプまではやりました。スキットとシークレットミッションはしんどいわ。

 アビス・シンフォニアもですけど、ストーリーとキャラが非常に良いですね。特にアビスとヴェスペリアは、夢見がちな子供の英雄譚から半歩・ないし一歩ずれているところが心地よい。どうにもね、子供のエゴ剥き出しの正義感で突っ走るタイプのシナリオや、ご都合主義はあまり肌に合わないんですよ。ヴェスペリアの主人公は斜に構えたタイプの、内心熱い正義漢。何をすべきかに躊躇が無く、それをどう思われようとも気にしない強さもある。しかし危うい繊細さもある。最近のRPGでは珍しいタイプの主人公かもしれないですね。とても好みのタイプです。特に(ネタバレ反転)刺されるシーンと、その後のソディアとのやりとりは良かったね。まあ、ソディアというキャラの立場を考えると、フレンにやって欲しい仕事ではあったけど。フレン、ただの甘ちゃんのいい人で終わっちゃったしなあ。(反転終了)そこも含め、もう少し見せ場を掘り下げていけば(=強弱を付けていけば)もっと印象深くなった。仕方ない部分ですが、ストーリー上の見せ場でアニメが入って、ってのは、まあ結構なんですけど、邪魔っちゃー邪魔なんだよね、アニメにほぼ興味ない私みたいなのからすると。このタイプのゲーム好きで、アニメ知らんわ、って人、少数派だと思うので、考慮しなくて良いとは思いますけど。

 ヒロインキャラであるエステルはイラッとする役回りですが、まあ仕方なし。それ以外の主人公チームのキャラも、リタを筆頭に良いキャラクター多いのですが、アビスと比べると魅力は一枚劣ると言わざるを得ません。深みというか、影というか。主人公が斜に構えている分、周囲は「いい人」を集めた感じですけど。まあ、それがアクにまで行かない程度に抑えられてるのは良い感じです。対して敵側のキャラクターは(敵では無いフレンも含め)やや淡泊。(ネタバレ反転)そもそもデュークにしても、あの立ち位置で、サブイベント中心にちょろちょろ絡んできて、最後の敵になるってところまでの盛り上げや感情移入に乏しいんだよなあ。まだ、普通に「星喰み」と闘った方が分かりやすいんじゃないですかね。もしくはデュークが星喰みになっちゃったりとか(反転終了)。アビスは、主人公が一度、その座から滑り落ちる、と言う物語の最大のからくりを中盤に設けることで、中弛みが一切無く、良質な前後編の小説を読んだ感じがありました。ヴェスペリアは、1冊の分厚い本で、章の区切りがすっきりせず、前半の面白さで読み切ったけど、なんかちょっと勿体ないな、と言う印象になる。そんな感じですね。

 その、薦めてくれた知人も含め、良く「オウガのロウルート的なストーリー」が良い、と言うのですが、個人的には、そこまでは至ってないかなという感じ。オウガやFFT程ではない。前述の反転部分や、ラゴウやキュモールを殺す点など、「表面上をなぞってる」「それっぽさ」は感じます。しかし、そのシーンに象徴される決断の重さや、人の命を背負ってる人間の苦しみみたいなのが表現されてないから、単なる「性格付け」にしかなってないんですな。デュークやフレンの立ち位置を、もっと上手く描くことで、そういったモノにはなるでしょうけど、それだと「テイルズ」としては突飛すぎるかもなあ。ラゴウとキュモールを殺したこと、途中から普通に「OK、OK」になってますよね。例えば、一度その事実が判明した時点で、カロルが完全拒否してユーリ平静だけどメッチャ落ち込む、とか、フレンはずーっとユーリの罪を裁く側として関わってきて、でもユーリの行動で自分はどんどん英雄になっていって、狭間で追いつめられていく、とか。無理だったかなあ。フレンの妥協振りは本当に残念ですよ。アレクセイでゲーム終わらなかった時、「ああ、ラスボスはフレンなのね」と思っちゃったし。少なくとも、ガッツリ闘うだろうなあ、とは。

 本当にね、デュークとフレン。どっちも素晴らしい役どころなのに、全体通じて見せ場に乏しすぎる。特にアレクセイ後〜エンディングへの流れは少し駆け足感があったな。「え、あんだけ色々大変な思いしてきてこんなさらっとハッピーエンド?」っていう。まあ、ユーリが貫いた正義の代償で殺される、とか、エステル途中で殺しちゃう、とかはテイルズである以上、やり得ないでしょうけど、その辺全部スルーはどうなのよ? せっかく、ユーリという地に脚の付いたキャラが頑張ってきた話が、一気にご都合主義で大団円、という尻すぼみ感は非常に後味として残ってしまい、勿体なかったな。そのユーリ自身も、終盤、ただの爽やかなヒーローに成り下がったし。「え、ライター変わった?」って感じ。うーん。まだアレクセイへ向けて話が集約していって、フレンと共に倒して終了、の方がスッキリしたかな。まあその場合デュークは要らない子なんだけど。実際、アレクセイ後がデュークの魅力書き切れているかというとねえ。

 「世界を救うために人々の生活の基盤を奪う。誰にも理解されないかもしれない。大悪人になるかもしれない」という部分も、匂わせておきつつ、あっさり受け入れられてしまう。なんじゃ、そりゃ。エンテレケイアに関しても、精霊化に伴う抵抗が実に淡泊。駆け足でポンポンポン、と流れ作業的に精霊になって終了。ギルドに関しても、ドンカッコイイね、で終了。イエガーの最期、雑ぅ〜。100点に近い、レイヴン離脱までの流れ。そこから先は進むほどに惜しくなっていく。序盤〜中盤で素晴らしい盛り上がりを見せたコース料理のメインが最高の肉なのに焼き加減イマイチで、デザートはコンビニプリンでした、みたいな。まあ、今のご時世、更に少年少女ファンの多いテイルズ。そうした枠組みの中では、限界近くまで頑張ってくれてるんじゃないでしょうか。

 多分、真っ当な意味での主人公はカロルなんでしょうね。カロル周りの描写・ストーリーだけ、最初から最後までブレがない。見せ場もしっかりある。正当な成長物語。ユーリという変化球と、カロルという直球。どっちかに絞りきれず、最後はいつも感じでいいやってところでしょうか。アビスがね、ルークを中心に描きつつ、サブキャラも語るに足るバックボーンがどすんとあって、見せ場がしっかりあったじゃないですか。それに比べてしまうと…ううん、惜しい。

 真っ直ぐ進めばそんな時間掛からないけど、寄り道すると色々やることがあるゲームバランスは、テイルズシリーズの「一部の」良作共通の良いところ。スターオーシャン的。難易度も程々。作業に陥る瞬間はほぼ無いし、機械的にストーリーを追わされている疎外感もない。気付いたらクリアしてたって感じの没入度。昔だったら、徹夜でやってたでしょうね。今は、ゲームをある程度の時間やってると、自然に気持ちが離れて一旦止めるようになってるので。このラインの人たちは、その辺がうまいですね。テイルズは、同じシリーズ名でも、中身が雲泥なので、なかなか指名買い出来ないところはあるのですが、この人達に関しては、もう「ある程度」安心できそうです。

 サウンドは、正直あんまりこの会社には期待していないんですけど。及第点なんじゃないでしょうか。音声も、邪魔に感じないって事は、かなり良い仕事してます。サントラ欲しいとか、全く思いませんけど。

 グラフィックに関しては、むしろスターオーシャンのスタッフにも見習って欲しいですね。何度も言ってますけど、リアルなポリゴンなんて、しょうもないです。所詮偽物は本物から何かを欠いたデッドコピーにしかなり得ない。なら、リアル方面へ進化するのではなく、表現の豊かさや、如何に想像力をかき立てるかという方向へ進化すべきでしょう。XBOXの性能もあり、アビスはテイルズシリーズでは文句なしの最高峰。それも無駄遣いされてない類の良さ。ここも良い仕事してます。あ、でも藤島デザインはもう良いです。鳥山明的なモノや天野喜孝的なモノとは違う、単なる「今更感」。好きじゃない。

 まあ、グダグダ言いましたけど、大半は面白かったわけで、あまり、シナリオ的な考証は気にせず、良いRPGやりたい人には普通にオススメってところで良いのかな〜。オーディンスフィア以降のゲームでは一番面白かったですよ、うん。シナリオも、高望みしなければ、そんなにガッカリすることもないでしょう。現に、感動したという方も多いですし。私がすれてるんですよ、うん。

 得点は8.5点。ほぼ9に近いのですが、ストーリーのメリハリと見せ方の部分では、もう少し頑張って欲しかったのでアビスより下で。実際、アビスではやれてたわけだし。まあとにかくこのご時世に頑張って良いモノ作ったスタッフには喝采を送りたい。出来れば、他の粗製テイルズと売り出し(看板)で差別化されると良いけどね。このチームだけにお金渡して、2年に1本ペースで作らせる方が、余程(キャラクターグッズなどの周辺展開を除けば)儲かると思うのだが。少なくとも「まともなRPGファンに白眼視されるテイルズ」という事態は避けられる〜軽減されるんじゃないか。

 次はスターオーシャン4。

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