名著!

オレンジの呪縛――オランダ代表はなぜ勝てないか?

オレンジの呪縛――オランダ代表はなぜ勝てないか?

 私が好きなナショナルチームユーゴスラビア(あくまでユーゴスラビア)、アルゼンチン、スウェーデンポルトガル、スペイン、そしてオランダ。

 オランダのサッカーは底抜けに美しい。オランダのオレンジは底抜けに明るい(同じ理由でヴァレンシアが好き)。そしてオランダのサッカーはとても脆く、儚い。いつも、最高の夢を抱かせて、あっさり散っていく。

 この本は、そんな強く美しい敗者オランダをオランダ人の目で分析した名著。オランダの欠点をつまびらかに並べることで、逆にオランダサッカーの魅力を余すところ無く紐解いている。何故サッカーファンがこんなにもオランダに魅せられるのか。それはオランダが「最高の」「敗者」だからなのだ。その最高たる所以、敗者たらしめるメンタリティと国民性。この本を読んだことで、オランダサッカーがもっと楽しく、好きになる。

 クライフの時代は映像でしか知らない。私にとってのオランダはファンバステンであり、グーリットであり、ライカールトであり。ファネンブルク、ニューマンやスタム、ヨンク、マカーイファンニステルローイスナイデルファンペルシー、ファンブロンクホルスト、ゼンデン、ファンボメル、そしてコクーにオフェルマルス! 大好きな選手は一杯居るけど、私にとってのオランダはデニス・ベルカンプ。この本を読んで、またベルカンプのプレー映像が見たくなりました。飛行機が嫌いなエース。そんなアンバランスさが、また溜まらなく、オランダという「何処か欠けている」チームの魅力を際だたせる。

 オランダ人が、自国の代表を「どうせ勝てないよ」と嘆息しながら評する様には「それでも俺たちの代表は美しいんだ、世界一…」という矜持が込められている気がする。フェルメールの国の人。レンブラントのサッカー。オランダは負けるからこそオランダ。散らないオランダはただの豚だ(!?)。オレンジの美学。その美しさを体感できる幸せ。オランダという国がサッカーをしていて本当に良かった。オランダのないフットボールなんて!

 ……とにかく、サッカー好きなら絶対読んで損しない本です。「MORBO」以来、自信を持ってお奨めします。

バルサとレアル―スペイン・サッカー物語

バルサとレアル―スペイン・サッカー物語

 その「MORBO」。バルサとレアルという2大クラブを軸に、スペインサッカーの面白さの詰め込まれた名著。これも読まなきゃサッカーファンじゃないぞ! あと今更ながら「オシムの言葉」「誇り」「悪者見参」の「木村ユーゴ3部作」もね。

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