今日のEURO

 得てして「死のグループ」というのは予想通りにならない。世間で言われる「優位性」はネームヴァリューによるもので、EUROに限らずW杯でも、シーズンの終え方を含むコンディション面も大きく影響する。クラブでお腹一杯になっている大国より、モチベーション高く国際タイトルに飢えている、意思統一のされている国の方が良いサッカーをする。このグループで行くとタレント順はイタリア=フランス>オランダ>ルーマニアだが、サッカーの質は反対になる。イタリアとフランスのファンには残念だが(まだ終わったわけじゃないけど)、大国にモチベーションを期待するのは酷でもある。
 イタリア−ルーマニアは素晴らしい試合。イタリアはデルピエロを入れたことでチームに芯が入り、プレーにハートを感じた。それ以上にルーマニアの仕上がりは素晴らしく、チーム全体に統一された哲学があり、イタリアのやりたいことをことごとく摘んでいく。あれだけ攻め込むのは、イタリアにとって本位ではないだろうが、最悪ドローでも良いルーマニアに圧倒的な精神面のアドバンテージがあった。失点、外れたPK(あのストップはもう流石ブッフォンとしか言いようがない。相手のミスキックを止めただけの楢崎とは全然違う、威圧力で止めたPKだった。しかしルーマニアはイタリアで対決してる分読まれやすいムトゥに蹴らせたのは勿体なかった。ブッフォン相手なら初見の選手の方が良いに決まってる)共にミス絡み。ああいうイタリアはなかなか見られない。「あれ?」「こんなはずでは」が時間を掛けてイタリアの選手を蝕んだ結果。カンナバーロの穴の大きさを感じる。イタリアにとっては、本当にラッキーに属する、「負けなくて良かった」という試合。辛うじて可能性の残った決勝Tへの道。他力本願の部分もあるが、まず最終戦は意地を見せて欲しい。ルーマニアはまだオランダに勝てば可能性あり、この試合も楽しみ。

 オランダ−フランスは、幾分余裕のあるオランダが先制したことで、オランダに余裕が生まれすぎて無駄が多くなった。それでもオランダのパスワークと、そこからゴールへ向かう一瞬の速さ・判断は見事。組織と個人の切り替えがここ2試合は完璧。フランスも入れ替えたことで前からさぼる選手が居なくなり、攻撃に怖さが蘇った。しかしイタリアと違い、中盤に展開力のないフランスは、オランダの流れを変える力がない。イタリアと違い、圧倒的に攻め込む勢いとメンタリティもない事が結果、オランダのカウンターを削ぐという内容。同じ展開でもイタリア戦ほどの「ワクワク感」は感じなかった。フランスに点が入らないのと同じく、オランダにもあまり点の匂いのしない展開。後半は圧倒的にフランスペースになったが、やはり代表でのアンリはアンリであって、アンリではない。明確な2トップにした方が機能する気がする。スタメンが機能しない時、選手交代で活性化できない。対するオランダは、ベンチにロッベンが居て、ファンペルシーが居る。ヘッセリンクも居る。この選手層はアキレス腱にもなるが、ファンバステンが監督である内は選手も不満が溜まらないだろう。その交代選手が速攻で2点目を奪取。ザ・オランダというゴール。美しい。何処までも美しい。涙が出そうなほどオランダ。これだからオランダサッカーはやめられない。最高! 2−0で心折れたフランスは攻めれば攻めるほど穴が広がっていく絶望的な状況で、諦めている選手が多く残念。合わせて眠り掛けていたオランダを、フランスのゴールが起こしてしまい、あとは血祭り。この点差で済んだのはオランダが「遊んだ」からに他ならず。イタリア戦同様、5−0、6−0でもおかしくない試合。この辺のおふざけもオランダの醍醐味。
 ファンデルサールブッフォン、そしてチェフ。この3人は、現在のGKでは「別格」。イタリアもチェコも、GKが並だったらもっと火だるまになっている。やや脆弱なオランダのDFも、ファンデルサールが居るから、チャレンジが出来る。今のオランダに勝つにはスコアレスで耐えてニステルあたりが切れるのを待つしかない。フランスは監督を更迭して、世代交代を押し進めて、それから。リベリ・ゴブら、今中堅に差し掛かっているタレントはやや気の毒。3戦目、イタリアに負けた方が(しかもボロボロに負けた方が)改革がしやすい。勝つとタチ悪い。

 大国は嫌いな私だが、イタリア・フランス・ドイツあたりは王者の矜持を持っていて欲しいし、面白いサッカーが出来ないならせめて勝って欲しい。こんなサッカーするならイングランドのように予選で消えて欲しい。寂しさを禁じ得ない。W杯ではオランダには期待できないしな〜……。クロアチア…うーん……。

 今日はD組。スウェーデン−スペインは緒戦の仕上がりを見る限り、あっさりスペインが勝ちそうだが、出来ればスウェーデンに頑張って欲しい。3−1スペイン。ギリシャ−ロシアはロシアの大爆発期待。ここで勝てば最終戦はエースが復帰する。3−0ロシア。

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