今日のEURO

 スペイン−ロシア。今大会に残ったファンタジーを感じさせる2つのチーム。どっちが勝っても、決勝は残った方を応援しようと思いながらの観戦。
 雷鳴轟き豪雨唸る中の試合。技術は僅かにスペインに分。場数はスペイン。戦略とメンタリティはロシア。モチベーションはどちらも腹8分。ここで負けても失うモノがないチーム同士。初戦の残像と、イタリア戦の0−0でスペインが勘違いをしなければ、と心配したが、きっちり攻める姿を見て安心。この試合が面白くなるかどうかはスペインに掛かっていたので、良かった。

 ロシアは慎重な入り方。慎重すぎた気もするが、オランダ戦同様、ヒディンクの罠を感じる前半。サッカーは90分のゲーム。前半を受けての修正は容易だが、後半の問題は修正しづらい。修正の手を加えるほどに、切れるカードが減っていく。前半のロシアは6分の出来。アラゴネスに「このままで良い」とロッカールームで言わせるためにヒディンクが蒔いた罠。ヒディンクにとっても、母国を始めとした大国ではこんな采配は出来ない。前半から最高のサッカーを見せるプレッシャーがある。ロシアはヒディンクにとっての、ここまでのベストチームでは無かろうか。大国ほどの圧力はなく、オーストラリアより駒はあり、韓国よりサッカー文化もある。無論ロシアの選手にとってもワンステップアップを代表で果たせる最高の関係。代表に行くたびにフォームを崩して各クラブへ払い戻される何処かの国とは大違い。

 後半早々、ピンポイントのパスでスペイン先制。イニエスタのパス、チャビの飛び込みは見事。ロシアがリードした方が間違いなく面白い試合になったので残念ではあるけど。これでヒディンクのプランも崩れてしまった。ロシアの選手の動きは重くなり、スペインの中盤が活性化した。あとはダムの決壊を待つだけ。そして決壊。スペインファンには最高のショー。サッカーファンとしては残念。ずっと良いプレーをしていたシルヴァがゴール決めたのは個人的にも嬉しい。もっと良い試合を見られると思っていたが、3ゴールはいずれも美しかった。

 終わってみれば、ロシアは、スペインを倒すにはクリーンすぎるというか、「噛み合いすぎる」んだろうなあ。ヒディンクを持ってしても個人能力の差は埋められない。むしろ逆にヒディンクのチームによってスペインの良いところが引き出されてしまったというか。ロシアのボールの捕りどころはFWかDF。中盤で回されると苦しい。考えれば、ヒディンクのチームも4強の壁は越えていないんだな。壁を越えたスペインとの差か。決勝はどうだろう。ドイツ相手になら充分に力を出せそうだけど。心の折り合いになるとスペインは脆い。

 金田さんも言っていたが、アラゴネスの采配は、勝つための采配ではなく「俺様」を誇示するための采配としか感じない。腹を括ると言えば聞こえは良いが、危機管理としては稚拙さが先立つ。好きになれない。グイサ? 良いFWだが、パワープレー要員だろう? チャビが出来が悪かったか? グイサが点を取ったのは結果論。結果オーライで名将にはならん。アラゴネスは私の中では名将にはなり得ないです。嫌い。

 でもイニエスタのパス能力は凄い。スペインの心臓は彼とセナだね。決勝も彼らの出来如何か。あとはセルヒオラモスがバカをやらないか。

 パブリュチェンコというFWは本当に不思議。試合の中で何度か、ビックリするようなノーマークになっていることがある。そして、大概フィニッシュに失敗してしまう。あれだけノーマークになれるのは動きの質と、センスがスバ抜けているからで、フィニッシュの精度がないのは、それを要求されるようなギリギリの局面に立たされていないからだろう。昔のトーレスに似ている。スケールを感じるが、ファーストオプションになりづらい選手。次の移籍が、世界的FWになるか、ネタ系の選手になるかの分水嶺だろう。ある意味ではアルシャビンより注目。

 トーレスとヴィジャ。イングランドに渡って「化けた」トーレスだが、パブリュチェンコの例と同じで、「まともなチーム/指導者に恵まれて能力が無駄使いされなくなった」だけのこと。スケールの大きな良い選手だが、ヴィジャほどの怖さはないし、効率もない。そのヴィジャはワントップで良し、ツートップで良し、カウンターでも遅攻でも良い。今、世界一のFWでしょう。トーレスとの関係はベスト。お互いに囮になって、使い使われる関係。ヴィジャがリバプールに移籍したら面白いだろうなあ…。今日の試合も前半で退場は残念。

 ドイツという国は、私(我々年代?)にはどうしても素直に応援できない。ドイツを応援するということは、巨人を応援するということと同意義だ。権威の象徴。長い物に巻かれる。ドイツを応援するということはそういうこと。そのくらいドイツは憎らしくて、退屈で、古くさくて、それでも強くて、嫌味で。70・80年代のサッカーファンから嫌と言うほど昔のドイツの凄さを語られて。だからこそ、今無邪気にドイツを応援する人の気が少し知れない(昔を知らずに応援する人、昔を知ってるのに今のドイツを応援できる人、どっちも)。今の野球で巨人ファン? V9を知らないのに巨人を語る? 74年を知らずにドイツを語る? 86年を? 90年を? 「ゲルマン魂」という死語を安易にマスコミやサッカーファンが口にするたびに、どんどんドイツが嫌いになる。今のドイツは、ドイツじゃないよ。ただのタレントに優れたチーム。憎らしくないが、退屈で、古さはなく、それでもそんなに強くなく、勝つ時は嫌味で。応援する気がしない。日本サッカーにべっとり根付く「ドイツ信仰」が薄れるまでは、私はドイツを嫌い続ける。最高に面白いサッカーをされたら、その限りではないけど、そんな心配はないし。シュバインシュタイガーのような「IQが低すぎる」選手がピッチにいる段階で、他の10人がどれだけ頑張ってもお笑いの文脈でしかドイツを語れない。トッティの居るイタリアみたいなものだ。ポドルスキとかラームとか、好きな選手も居るんだけど。ああ、レーマンもね。バラックはメンタルがヤワなので嫌い。良い選手だとは思うが。

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