サッカーとは何か?

 移動中に「レアル・ザ・ムービー」を見た。サッカードキュメンタリーとしても素晴らしい出来であるし、トレーニングからプライベートまで、選手を横に斜めに切り取った映像は1サッカーファンとして非常に見応えがある。サッカーを題材にした映画では過去最高かも知れない。少なくとも私の中では過去最高。

 この作品の素晴らしいところは、レアル・マドリードというチームを通じて、この素晴らしいスポーツの本質を切り出していることだろう。作品中で、主人公? がデステファノへ投げかける質問。

 「レアル・マドリードとは何か?」
 「愛情、そして兄のようなものである」

 レアルとは? バルサとは? クラシコとは?

 サッカーとは?

 サッカーとは。

 人生。

 他のどんなスポーツでも、こんなに「人間」を投影する物はない。こんなに「人生」を支配する物はない。野球にも、バスケットボールにも、バレーボールにも競馬にも。「人生」を感じさせる一瞬はある。人生の一定時間を燃焼させる熱さはある。だが、サッカーほど永続的で、心を揺さぶり、繰り返し訪れる喜怒哀楽を堪能できる物はない。他のありとあらゆるスポーツを全て足した物に匹敵する競技。それがサッカーだ。サッカーに出会い、サッカーに狂い、そしてサッカーを愛する。楽しむ。それが人生の様々な場面を彩り、また人格形成を司る。私はイタリアW杯で出会い、J開幕で本格的に嵌った。まだ人生の半分しかサッカーとつき合っていない。それでもサッカーの与えた影響は計り知れない。「サッカー以前」の人生で、親から得たモノに次ぐ濃度で、私という人間を作っている。

 日本には、残念なことにまだ、この映画で切り出されているほどのサッカー文化は根付いていない(冒頭〜随所に日本の高校生男女を描いているが、その浅さ・浅ましさは恥ずかしいほどだ。ああ、本当に恥ずかしい。こんな良い作品を通じて、サッカーファンが「日本のサッカー好き」としてあれらを見ると思うと穴に入りたい)。例えば私の浦和レッズへの愛情は、マドリード市民のレアルに対するそれとは比べるべくもない。それは、サッカーが「産まれながら」にそこになかったから。日常でサッカーに熱狂するインフラが整っていないから。この差は永久に埋まらない、が、この「レアル・ザ・ムービー」をつうじて、自らのサッカー観、チーム愛を「再構築する」ことは可能ではないだろうか。クラシコの瞬間にサポーターが味わう、あの脳髄が溶け出すような歓喜。私はそれを、ステージ優勝の時に味わった。大袈裟に言えば「今日が地球最後の日でも構わない」という感覚。あれに匹敵する感情を人生で味わうとしたら? 他に例えるなら? 馬主としてダービーを勝った。自分の作ったゲームが100万本売れた。いや、それでももう少し冷静な気がする。この映画を通じ、あの感覚を再び味わいたいと切に願うことが出来た。それだけで価値があった。感謝したい。

 サッカーが好きな人は、是非、見てください。それにしても、「バルサ・ザ・ムービー」だったらもっと楽しめたのにw 世界で、サポーターではなくても熱狂できる対象は3つしかないと私は思う。レアル、バルサ、ブラジル代表。私の中の序列では1)バルサ 2)ブラジル 3)レアルなのだ。1と2の差は果てしなく大きいけど。バルサこそが、真の意味で「敬意」を払い得る世界唯一の「応援していないチーム」なのだ。見たいなー。

レアル ザ・ムービー [DVD]

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