嗚呼エジプト……

 反政府デモの余波で様々な被害が出ていますが、遂にというか案の定というか、カイロ考古学博物館もやられちゃいましたね。実被害のほどは情勢が落ち着くまで見えてこない部分もありますが、アルジャジーラのサイトで見る限りかなり荒らされた模様。少なからずの名品逸品が駄目になってしまっていそうです。本当に悲しい。

http://english.aljazeera.net/watch_now/

 私がエジプトに行ったのはもう9年前。ピラミッドや王家の谷、アブシンベルなど素晴らしいモノを色々見ましたが、その中でもやっぱり一番ときめいたのはカイロ考古学博物館だったんですよね。ツタンカーメンや高名ファラオのミイラも勿論でしたが、あの空間に雑然と押し込められたエジプトの歴史。圧倒されんばかりの物量。建物自体も、展示状況もけして人類の遺産と言うべき名品にとってベストと言える空間ではないな、とは思いましたが、それも含めてエジプトらしさは存分に味わえる場所。また、必ず行って、今度はもっとゆっくり見るぞと誓ったモノです。

 実際問題、エジプト発掘品の超一級品の多くは海外の博物館に分散していて、まさに「エジプトのモノはエジプトに」ということで返還運動が実りつつあったタイミング。これで、全てはリセットでしょうかね。かつてギリシャの返還要求に対しイギリスが「大英(博物館)ならずっと安全に良い状態で保管できる。展示品にとってはその方が幸せ」という趣旨の発言で突っぱねたという話がありました(うろ覚え)。まあ、事実といわざるを得ない面もありますよね。

 ともあれ、政情が安定するまでなんとか現状以下にならないよう軍も警察も自警団も頑張って欲しいと思います。私は、もし世界中の美術館博物館に爆弾が仕掛けられて、どこか1カ所だけ助けてやろうと言われたら、迷わずカイロ考古学博物館と言いますよ……。

 ただ、ニュースやtwitterなどで断片情報を見て「エジプト人バカか」と言っている人も多いですが、当然ながらエジプト人にとっても歴史遺産は何を置いても守るべき誇りであり国の象徴であり、観光立国であるエジプトにとっても生命線であるわけで。略奪を働いたのは一部の暴徒ですし(こういうのはどんな政情の安定した国でも出ます)、今は市民が盾となって博物館を守っています。我々日本人が思う以上にエジプトはしっかりしています。大丈夫です(余談ですがエジプト人の英語しゃべれる率は凄いです。生活がかかってるからと言えばそれまでですが、私の浅い狭い経験上においてではありますが、こんなに英語をしゃべれる非英語圏の国を知りません)。

■中東の窓:エジプト情勢(カイロ博物館の被害)

 盗難にあった展示品も多くは回収されたという話ありますけどね。アルジャジーラで見ても、明らかに「あ、壊れてる」というモノがいくつか。大好きなアクエンアテンの立像を始めとしたアマルナ遺物が無事だと良いなあ。ホル王の木像も。プント遠征(交易)レリーフも好き。メリトアメン像も。ああ、もうとにかく無事で……!

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