ウォーエンブレム考(2)

 前回の続きです。長くなったので3に続きます。

3)切れる脚がない、は本当?


 ウォーエンブレムといえば先行押し切り、そしてハイペースに強い血統。スローで折り合って直線爆発、というサンデー時代の競馬に真っ向から相反する存在、というイメージがあります。これに関しては上の2つ以上に私は出資馬も含めた観察を通じて「そうだな」と思っておりますが、実際はどうでしょう? 芝の良馬場に限定して見てみます。


■脚質別

脚質 出走数 勝ち 勝率 連対率 単回収 複回収
逃げ  033 07 21.2% 36.4% 194円 115円
先行  093 20 21.5% 31.2% 114円 085円
中団  130 12 09.2% 16.9% 116円 111円
後方  071 03 04.2% 12.7% 026円 056円
マクリ 003 00 00.0% 00.0% 000円 000円

■レースの上り時計

上がり順位 出走数 勝ち 勝率 連対率 単回収 複回収
1位  045 14 31.1% 55.6% 186円 255円
2位  030 12 40.0% 60.0% 245円 157円
3位  024 05 20.8% 29.2% 165円 149円
4位〜 231 11 04.8% 09.5% 062円 043円

■4コーナーの位置

位置 出走数 勝ち 勝率 連対率 単回収 複回収
4角先頭 030 08 26.7% 40.0% 226 134円
2〜3番 068 10 14.7% 26.5% 047円 072円
1/3内 134 28 20.9% 31.3% 131円 089円
1/2内 201 35 17.4% 26.9% 145円 095円
1/2外 129 07 05.4% 14.0% 038円 085円

■レースラスト3F通過時の先頭との差

タイム差 出走数 勝ち 勝率 連対率 単回収 複回収
0.0〜0.2 075 14 18.7% 30.7% 110円 084円
0.3〜0.6 100 12 12.0% 20.0% 110円 125円
0.7〜1.0 079 09 11.4% 20.3% 115円 089円
1.0〜 094 08 08.5% 18.1% 070円 065円

 ちょっとこの数字から傾向を見いだすのは難しいですね。とりあえず逃げ先行が強い、上位入線するときはレース上がり1〜3位が多い、残り3Fで先頭から0.6差までにいた方がよい、など。前にいた方が良いのですが、単に展開に恵まれて逃げ・先行残ると言うよりは、自力でねじ伏せるような競馬が合う感じです。そこはイメージに合います。もう一つ、レースラップによる戦績を見てみましょう。TARGETには「PCI」という便利な数値があります。


■RPCI値

数値 出走数 勝ち 勝率 連対率 単回収 複回収
〜36 008 01 12.5% 12.5% 022円 015円
37〜44 054 08 14.8% 22.2% 232円 107円
45〜52 137 14 10.2% 22.6% 095円 087円
53〜60 098 12 12.2% 20.4% 065円 100円
61〜68 028 05 17.9% 21.4% 052円 075円
69〜 005 02 40.0% 40.0% 074円 080円

 RPCI(レースPCI)のことを説明しますと、50を平均値とし、それより小さい場合は前半>後半、大きい場合は前半<後半となり、小さいほどハイペース(前傾ペース)、大きいほどスローペース(後傾ペース)となります。現代の芝レースがいかに後傾ラップか分かる、というのはさておいて、あんまりハイペースに強いって感じでもないですね。むしろスロー(後傾ラップ)で成績がいい。

 ちょっとこれは意外でした。ウォーエンといえば34秒以上上がりの掛かるレース向きという印象があったんですよね。で、過去のレースをざっと見ていて気づいたことが。ウォーエン産駒がデビューしてからずっと、マイル以上の距離で33秒台で上がって連対した馬なんていなかったんですが、去年の11月にサトノレオパードが初めて上がり33.4秒で2着になって以降、何頭か33秒台の上がり競馬で勝つ馬が出てきてるんですよね。SS直子がいなくなったことで、ウォーエンを取り巻く環境も替わり、同じ上がり競馬でも爆発しやすいレースの流れになっているのかも知れませんね。

 あともう一つシンプルなポイントが。芝マイル以上で、上がり33秒台で連対したウォーエンは過去4頭しかいませんが、うち3頭が母父SS。やっぱりサンデーは偉大ですなあ。そんなわけで、母父SSかどうかで先ほどのRPCIを見てみます。


■母父SS

RPCI 出走数 勝ち 勝率 連対率 単回収 複回収
〜36 002 01 50.5% 50.5% 090円 060円
37〜44 015 04 26.7% 33.3% 184円 098円
45〜52 034 03 08.8% 23.5% 047円 060円
53〜60 027 05 18.5% 29.6% 147円 088円
61〜68 007 03 42.9% 42.9% 122円 058円
69〜 002 01 50.0% 50.0% 075円 135円

■非母父SS

RPCI 出走数 勝ち 勝率 連対率 単回収 複回収
〜36 006 00 00.0% 00.0% 000円 000円
37〜44 039 04 10.3% 12.8% 250円 110円
45〜52 103 11 10.7% 30.1% 126円 116円
53〜60 071 07 09.9% 28.2% 090円 138円
61〜68 021 02 09.5% 28.6% 069円 100円
69〜 003 01 33.3% 33.3% 123円 133円

 母父SSはハイペースもスローペースも強い。私としては「SSが入らないとやっぱりハイペースの方が良いですね〜」と言いたかったのですが、単に能力が底上げされているという、他の種牡馬と同じ結果に。ちょっと不思議なのは、母父SSは平均ペースだと成績がかなり悪いんですよね。

 もう一個。上がり3F差も見てみますか。


■母父SS

タイム差 出走数 勝ち 勝率 連対率 単回収 複回収
0.0〜0.2 012 05 41.7% 58.3% 227円 091円
0.3〜0.6 027 05 18.5% 33.3% 124円 103円
0.7〜1.0 021 03 14.3% 23.8% 069円 062円
1.0〜 030 05 16.7% 20.0% 100円 058円

■非母父SS

タイム差 出走数 勝ち 勝率 連対率 単回収 複回収
0.0〜0.2 063 09 14.3% 25.4% 088円 083円
0.3〜0.6 073 07 09.6% 15.1% 105円 133円
0.7〜1.0 058 06 10.3% 19.0% 132円 099円
1.0〜 064 03 04.7% 17.2% 056円 068円

 同じく、総じて母父SS優勢。繰り返しますが「芝マイル以上に限定してる」わけですが、ウォーエンは(も)母父SSが良いってところですね。ここでも逃げに近い競馬や追い込みに近い競馬では母父SSの優勢が際だち、0.3〜1.0くらいの差の場合は差が小さくなる傾向にあります。馬券的にはこの辺になにか見えるものがあります。POGなどでも、先ほど言った「芝の上級条件は3歳まで」という傾向を考えると母父SSに狙い目を絞るべきかも知れませんね。POGで騒がれたウォーエンは何頭もいますが、(期間内に)こけた馬はほとんどSS入ってませんし。

 さておき、ウォーエンブレムのイメージというのは基本的には先入観の産物ということがある程度は立証できた気がします。馬券の話に行く前に、厩舎と騎手のデータも探ろうと思ったのですが、何せ希少な種牡馬。そこまで顕著な得意厩舎は見えません。

 一応、最多勝はマツパクさんですが、2頭以上預かってどの馬も勝ち上がらせているのは池江ジュニア、コジシゲさん、カズー、須貝さん、浅見さん。池江ジュニアはウォータクティクスエアパスカルで重賞勝ち、残りのキュートエンブレムもフローラS3着(+その後小島太厩舎で2勝)。非常にハイアベレージ。コジシゲさんはブラックエンブレム姉妹だけなので、他の馬でどんな結果出るか見てみたいですね。残りの3人は勝ってるとは言え下級条件クラスまでで何とも言えません。逆に手塚さん、石坂さん、戸田さん、大久保洋さんあたりは重賞級の1頭以外は未勝利で、ここに入るからって良しとは言えません。

 騎手では吉田豊武豊最多勝武豊は勝率・連対率も優秀で、福永・アンカツも率高いです。アンカツは芝でWEに7回乗って3勝2着1回3着2回。残りも5着。ブラックエンブレムのイメージ鮮烈な岩田騎手は、あんまり数字良くないです(勿論WE全体の平均は上回るのですが、秋華賞を除いた回収値は非常に低い。そういえばピースエンブレムでも3回乗って全部掲示板止まりだったな)。まあ、良い方の数字はほとんど活躍馬の成績なので、岩田が思ったほど合っていない、ってイメージだけ持っておけばいい気がします。先ほどのアンカツを別にすれば、地方出身騎手や腕っ節の強い騎手の数字がそんなに良くないなと感じました。実際、地方在籍騎手と外人では一度も勝ってないんですね、この種牡馬。外人は時間の問題な気がしますが。

 次回はお待たせ(?)馬券の話を〜。

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