毅然と偽善。

 本日、スタンニングへの角居調教師のコメントがサウス公式で更新されており、それを見て感じることが。
 これは一口に限らず、人間の関わる全てに言えることですが、とにかく、大多数の人間は、何のトラブルもなく順調な環境では、能力の差異はそうそう生じないんですよね。順調な中で問われるのは、判断能力や、責任能力ではなく、人付き合いの能力だったり、効率の良さだったり。

 それが、トラブル下になると、「トラブルに際し、如何に冷静に、優先順位を付けて行動できるか」という、複合的な能力が問われてくる。目の前で起きたことに呆然とする人、取り乱す人、人に当たる人。普段はしっかりしてて、人に指示する人間が、一気に人望を無くしたり、普段はおっとりしてるけど、ピンチに際しててきぱきと行動して、一気に人望を得たり。我々社会でも、そんなことで3年5年サイクルの信頼を失ったり、揺るがぬ信頼を得たりするモノです。とかく、非常時に冷静に行動できる人間というのは少ない。経験がモノを言う部分もあるのですが、本質的には、その人の先天的な資質であったり、育った環境であったりで、社会に出る頃にはもう「器」が決まってる部分も。その器を活かせる環境かどうか、ということはあるでしょうけど。

 さておき。角居先生の非常時に於けるコメントの的確性。「納得の行く度合い」というのは、私が知る限り、調教師としては群を抜いています。未勝利馬に対する執念、こうしたトラブルに際しての対応力と、毅然とした態度。それこそが、G1トレーナー角居勝彦の「原点」なんでしょうね。

 以下は愛馬、エリンズフォレストの引退前のコメントです。

屈腱炎の回復状況を見守っていく中で、1年間というのは、ひとつの区切り。能力の高さを買っている馬ですから、何とか現役復帰をさせたい一心でここまで治療を重ねてきましたが、ここまでの経過で見えてきたもの、費やした期間、今後の見通しなどを考えていきますと、これ以上はあまりにもリスクが高く、復帰の目処を立てるのは難しくなってしまったと言わざるをえないでしょう。そろそろ決断を迫られるタイミングであると考えます」(角居調教師)

 なんという分かりやすい説明でしょう。エリンズが進展のない療養をする間は、結構ストレスが溜まったりもしましたが、最後にこういう納得の行く「区切り」を付けてくれれば「まあ、仕方ないか」と思えるというモノ。角居先生の「我慢」は所謂「引っ張り」とははっきり異なると思える点はここで、だからこそプリンセスデザイアの現状も(諦めの境地であることは否定しませんがw)受け入れられます。角居先生がスタンニングのコメントで出している「万策尽きた」という言葉は、他の調教師の口から聴いたら逆鱗に触れる言葉かも知れません。現に「万策を探って、実施してきた」角居先生だから、使う権利があるし、腑に落ちる。

 具体例は挙げませんが、こうした時に「タラレバ」を言うだけの嘆き節調教師が一杯。愚痴を言いたいのは、会員であって、クラブや調教師ではないはず。100%調教師のせいではないにしても、そこで共感と同情に逃げるのは卑怯です。責任と、きっちり仕事をしたという自負に裏付けられることなく操り、繰り出される言葉は、如何に「毅然」とした響きを持っていても「偽善」と言わざるを得ないでしょう。半年一年我慢した後に見るのが「偽善」では、もううんざり。この差は大きいです。責任感ってのは、社会人の最低限の土台でしょう。競馬サークル、特に一口界隈には責任感の伴わない人だらけでガッカリさせられますが、角居先生みたいな人を見るとほっとします。

 スタンニングに関しては、出資者の皆様は、勿論勝ち上がれなかったことは残念でしょうが、引退自体には安堵する部分もあるのではないでしょうか。是非また、角居厩舎に出資して、大物の夢を見て欲しいと願います。私も、エリンズ、デザイアで未消化の夢を、ジールや、今後の出資馬に託していきます。一緒に頑張りましょう〜。

 キャロでは過剰人気(結果が出てるので、過剰ではないか。しかし…)なので、手を出す気はありませんけど。ああ、キャロのカタログ週末ですね。楽しみだなあ。

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