夢の架け橋。

PLUTO 豪華版 (4) (ビッグコミックススペシャル)

PLUTO 豪華版 (4) (ビッグコミックススペシャル)

HIROさんの所のトピックを受けて書いてます。この素晴らしい漫画の話をしたくなりました。HIROさんありがとうございます。

私は手塚世代ではないのですが、そんな私から見ても手塚治虫という人は完全なる「異次元の存在」です。他のどんな当時の作品を読んでも、ある種の郷愁、ノスタルジーを抜きにして、本当に面白いというのは難しいと感じてしまいますが、手塚作品は今読んでもぞくぞくするほど新しい。今の漫画が20世紀の模倣だとしたら手塚作品は完全に21世紀。

そんな人の代表作「アトム」の「史上最大のロボット」をあの浦沢直樹がリメイクする。最初は「キケンだな」と思いました。私はドンピシャ浦沢世代ですが、彼の一番好きな作品は「マスターキートン」です。この漫画は原作付きですが、実際は原作者ではなく、浦沢氏自身と編集者の長崎氏が創作していたというのはファンなら知る話(それにまつわる「絶版」騒動などもあるのですが、それは割愛)。そんな敬愛するコンビが手塚作品を書くことで、手塚時代をリアルに体感したファンから嫌悪されるのではないかと心配しました。同時に、回顧主義的な内容になって現代の読み手の心を掴めないのではないかと。手塚というビッグネームに萎縮して浦沢イズムを封じることだけは避けてくれよと。

でも中身を読んで安心。そういうレベルを超えた、まさに「浦沢直樹の代表作」になるべき作品として「PLUTO」は動き出しています。そうです、手塚作品のリメイクではなく、手塚治虫という傑物に対する浦沢直樹の絶大なる尊敬と、挑戦。「PLUTO」にはそんなものを感じずにいられません。この組み合わせが生まれたことは奇跡のようなモノです。幸いにして、この年になっても、現代日本の生み出す漫画の中からでも、ストーリーとして面白い漫画には年に数度出遭えますが、ページをめくるわくわく感を味わえるのは子供時代以来といっても良いです。

真のエンタテイメントにリアルタイムで触れてきた、手塚世代には当時の輝きを再現する、暖かい光を。表層の記号をなぞって楽しむ現代の読み手には、漫画の本質を伝える挑戦者たる奥深さを。その中間世代である我々には、暖かさの体験もなく、表層に踊ることも出来ない寂しい我々には、その両者の中間で進んでいける「架け橋」を。「PLUTO」が各世代の読者に深く愛されることを期待して止みません。早く先の展開が知りたい〜! でも私は単行本で読む派なので、最新のストーリー言っちゃダメー!

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