少し遅れた話題ですが。

http://d.hatena.ne.jp/Southend/20070112

 Southendさんのブログで、非常に興味深いエントリがここ数日続けられており、私も自ブログで自分の考えを書いておこうかと。

 年度代表馬の選考に関しては何の議論の余地もないでしょう。ディープ以外を選んだ人は、こう言ってはなんですが、良くて「受け狙い」悪くてチンピラです。年度代表馬というのは、その年の競馬の顔を選ぶ賞なので、ディープ以外あり得ないです。同じ理由で、以前エルコンドルパサーが選ばれたことにも何の疑問も抱きません。エルコン不在の国内古馬G1戦線が「日本の最強馬を決めるレース」だったとは思えませんから(無論その選抜課程については気持ち悪さを感じましたけど)

 今回の選考のおかしな点は第1に「JRA賞の対象は何者であるのか?」第2に「レースの格と実質の価値の序列をどう考えているのか」です。そして加えるなら「選者が選者である所以は何なのか?」。
 最優秀2歳牡馬であるドリームジャーニー。朝日杯は生で見てきましたが、私の記憶する中で、インパクトとしては最も薄い部類に入るレースでした。現場の空気的にも、エイシンチャンプの年に似た雰囲気だったように思います。多くの競馬ファンは「フサイチホウオーの方が上だ!」とお感じでしょう。私も、馬の序列としてはそう考えています。

 しかし、「最優秀2歳牡馬」というカテゴリであれば、何の議論の余地もなく選ばれるべきはドリームジャーニーです。ラジオNIKKEI杯は皐月賞〜ダービーへのプレップレース。朝日杯は2歳唯一のG1。レースの格が違います。朝日杯という、世代唯一のG1へ出走しなかった時点で、フサイチホウオーには2歳チャンピオンの資格がないのです。2歳チャンピオンとは、3歳クラシックへ向けた最有力馬のことではありません。日本のレース体系で、2歳チャンピオンを決めるカテゴリはマイル戦であると、グレードが物語っています。この結果に不満がある人が、文句を言うべき点は、「日本のグレード制をレイティング方式に変えろ」ということであって、G3馬をチャンピオンに選べ、と言うのは論点がずれているように思います。私自身、レースグレードはレイティングに基づいて選定されるべきだと思いますが(そうすると春天はあっという間にG1ではなくなるでしょうが…)、一方で、旧態依然とした日本のグレード制への愛着も強く。まあ、とにかく今の日本のグレード制に於いて、ラジオNIKKEI杯を制した馬がどのような圧巻のパフォーマンスを見せても、朝日杯を勝った馬より評価されるのはあり得ない、ということです。

※究極的な問題としては、日本人の「マイル蔑視」がこのカテゴリを難しくする要因なようにも思いますけどね。2400mの強豪は2000に距離短縮して負けると「条件が合わない」と言われるのに、マイラーが2000を勝てないと、弱いとレッテルを貼られる。マイラーの最終目標である安田記念マイルCSがもっと権威持たないと、ずっと朝日杯<NIKKEIという「勘違い」は消えないのでしょう。

 あとは地方・海外レースの位置づけ。エルコンドルパサー年度代表馬に選んだ国が、最優秀ダート馬にブルーコンコルドを選ばない理由はないでしょう。仮に地方はそっちの年度代表馬があるから、と言うなら、どう考えてもアロンダイトではなくカネヒキリが選ばれるべきです。この疑問は、トゥザヴィクトリーが最優秀ダート馬にならなかった時にも感じました。基準が曖昧すぎる。別にどっちでも良いのですよ、基準さえしっかりしていれば、その中で選ばれた馬の権威は保証されるのだし。でも、仮にどっちだとしてもアロンダイトはあり得ないなー…。

 まあ、ともかく。私が現時点でのJRA賞をわかりやすくするには「2歳戦は全部ノングレードにする」「地方・海外レースの扱いを明言する」「グレード制にレースレートを設け、レイティングを基準に選抜するか、少なくともレートを得票数に係数としてかける」などをするべきだと思います。更に言えば、年度代表馬以外の表彰はいらないんですけどね。アメリカや欧州のように、チャンピオン決定戦が複数ある環境ならともかく、日本はそうじゃないですから。

 一方で思うのは、JRAがどんな曖昧な判定方法で各賞を決定しようと、我々競馬ファンの間では「俺の選ぶ各賞」はあるわけで。それをそれぞれのスタンスで議論しあう楽しさはまた一つの競馬の醍醐味。ならば、権威もへったくれも無くとも、毎年こうして賞を発表する意義はあるなあ、いや、意義というか「ネタ」としてね、と思うわけです。

 結局一番肝心なことは「お前ら、代表馬選考に関わってるけど何様なのよ」というところで。全選考者が自分の立ち位置を明確にし、反対意見上等として、選抜理由をはっきり述べるのであれば、どんな馬が選ばれていても良いのです。ガラス張りの密室で、奇妙奇天烈な投票をする妖怪変化のような得意な記者が居ると言うことが、我々ファンの不振の源でしょう。だってそんなん、2ちゃんと同じだしな(投げっぱなし度とその不毛さに於いて)。そういう意味で、Southendさんのエントリを通じて、投票者の声的な物を結構拾うことが出来、楽しかったです。もっとみんな大声で言えばいいのにな。

 そんなわけで最後に、私の選ぶ06年の各賞を。判断基準は「G1勝ち馬であること」「王者の競馬をして見せたこと」「2歳戦は整備されていないのでグレード順」。

※説明:ディープは言うこと無し。上でも書いたが年度代表馬の次点が存在する理由無し。この馬以上に完璧な「年度代表馬」は過去テイエムオペラオー1頭だろう。2歳牡馬の次点は2歳チャンピオン戦線で一番実績を積んだ馬。牝馬も同様。3歳牡馬の次点はG1未勝利馬は資格無しとの考えからドリパスではない。3歳牝馬は強いて挙げれば次点はキストゥヘヴン。だが、無敗の牝馬2冠という偉業を成し遂げ、実質エリザベスも勝ったカワカミの次点は不要だろう。オークス桜花賞or秋華賞を勝った馬に議論の余地はない。これが桜花賞秋華賞vsオークスだとまたややこしいけど。ファレノプシスの年とかね。4歳牡馬はディープで良いが、基本的に賞は重複しない方が良いとも思うので、そうなるとダイワメジャーとハーツ。あのキングジョージ3着は価値あると思うけどな。あとこのタイトルは「裏年度代表馬」にあげるべきだとも思うので、今年の競馬のナンバー2はハーツでしょう、と。4歳牝馬は新設ヴィクトリアマイル勝ち馬で文句なし。エリ女は3歳の競馬だったし。内国産馬はカワカミだが、先ほども言った重複しない選定だとデルタブルース。ロジック? ないでしょう。短距離馬はダイワメジャーか、該当馬無しか。一番今年印象に残る短距離馬はテイクオーバーターゲットで、次はブリッシュラックだもんな。無論その2頭のどちらかでも文句はない。ダートは地方ありならブルーコンコルド、無しならカネヒキリの2択。アロンダイトはこれからもっと強くなるが、王者の競馬は一度もしてないし。障害は本来ならば国際招待であるグランドジャンプの権威が上にしたいが、勝ったのが外国馬なので議論の余地無し。こんな感じです。あなたの選ぶ馬は何ですか?

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