Wcup06・イタリア−フランス

のぼせた審判の存在しないPKで始まった試合。のっけにアンリがダメージを追い、不安漂うフランスにはこの上ない贈り物。

トータルで見るとイタリアの方がフランスよりレベルは上のチーム。しかし勝つ資格がよりあるのはフランス。その点について。

この試合は一般的にはイタリアのリアリズム対フランスのファンタジアの激突。ただそのリアリティ溢れる素晴らしいイタリアの中には、何度も繰り返すが染みとも言える過ちが混ざり込んでいる。マテラッツィトッティ。こんな「のぼせ屋」……普通の試合ですら我を忘れる低劣IQの持ち主……を決勝で使うなんて。

マテラッツィ。得てして決勝はミスで決まる。そのミス、エラーの象徴のような選手。得点シーンに見られるよう、ポテンシャルは高いし爆発力もあるが普通に考えれば使い物になる選手ではない。これも何度も言うが、最高選手かつ脆弱なネスタのバックアッパーがこんな選手しか居ないのがイタリアの致命的欠陥。

トッティ。世界一「空気の読めない」サッカー選手。イタリアはピルロを拠り所に後は偏差値の高い選手で固めきるべきだった。トッティのエゴはピルロのタクトを狭め、トニを孤立させる。ペロッタのモビリティの障害物となり、素晴らしいサイドアタックのリズムを損なう。ごく稀に、ゼロから勝ちゲームを生み出す能力のある選手で、嵌った時のパフォーマンスは世界一クラスだが、とにかく平均値が低すぎ。彼を評価する人間はサッカーを侮辱している、もしくは余りに無知。トッティジダンではない。何かを成し遂げたイタリアのシンボルではなく、頂点に返り咲きたい強豪チームの脆弱なランドマークに過ぎない。身体能力「だけ」が売りの選手なのに、老いたジズーに運動の質量共に完敗とは…。全くお笑い。

イタリアはそんなレベルの選手のバカ当たりに頼る必要のないチームなのに…。そもそも人間は過去の自分を省み、反省学習する意志のある人間だけが伸びていく。彼らが自分の弱点を自覚して反省して鍛える意識があるとは思えない。彼らに反省を促せなかったのはイタリアという国の敗北。それを促せなかったリッピの采配ミス。

一方のフランスのファンタジアは圧倒的なまでのリアリズム溢れる守備がベースになっている。その守備に穴となる選手は居ない(強いて言えばGKバルテズのメンタル面)。そしてジダンに注目が集まるが、卓越した運動量でその左右を支えるリベリー・マルダが破綻を防ぐ役も果たしている。98年のチームよりバランスは遙かに上。ドメネシュがリッピに勝る点は特にない。指導者としては全面において劣っていると言っても良い。それでも、あの辛い予選でマケレレテュラムを戻す決断をした時、彼は指導者としての自分のエゴを放棄している。

つまり現実はイタリアの幻想対フランスの現実なのだ。このイメージのずれがゲームを面白い物にしたとも言える。1点ずつは除外するとして、残りの70分は掛け値なしのファイナルレベルの試合だった。リッピも最後の一線でピッチ上のハンディキャップを除外し、名将の矜持を保った(しかし時間掛かったな。見て欲しい。私は組み合わせ抽選の時点でトッティを除外したイタリアの優勝を予想していた。別に自慢ではなく、普通にサッカー見てれば分かることだ)。ハンディが消えた瞬間イタリアは11人のチームに復活し、その後は底力の差が出た。俄然中盤の風通しが良くなり、攻撃がスピード、危険性共に跳ね上がった。本来のイタリアに戻ったと言っても良いだろう。無論フランスはヴィエラを不測の事態で失ったことも大きかった。

そしてそのイタリアは90分のうちに決められなかったことが大きかった。カンナバーロガットゥーゾの2人は限界ギリギリのところで耐え続けた。フランスも延長に入り圧倒的に流れを掴みながら最後の局面、その手前で精度を欠いた。結果、PKまでもつれたのは相応しかったと言える。イタリアがスタートから適切なメンバーを使っていれば確実に勝っていただろうが…。最後に水を分けたのはブッフォンバルテズの威圧感の差だっただろうか。

しっかし、最後までジダンジダンらしかったなw 解説は「残念だ」って言ってたけど、俺は嬉しかったよw

最後に。本大会のベストイレブンを独断で。決勝に残った両チームに敬意を払い、4−5−1で。

  • GK:ブッフォン(イタリア)/別格の安定性。この国際見本市でも格の違いを見せた。
  • DF:カンナバーロ(イタリア)/スピード・パワー・読みの全てでトップクラスのパフォーマンスを見せ「続けた」。この継続性ことカンナバーロの凄み。
  • DF:マルケス(メキシコ)/彼も圧倒的な存在感。ピッチ上の支配力という点では最高選手と言える。
  • RB:ザンブロッタ(イタリア)/パフォーマンスの高さ、攻守のバランス共に完璧。左右同じレベルでこなせる卓越したユーティリティ性も。
  • LB:ヌノ・バレンテ(ポルトガル)/地味ではあるが、彼と右のミゲウはポルトガルの攻守を支え続けた原動力。
  • DMF:ガットゥーゾ(イタリア)/まさにクラッシャー。まさにダイナモ。近代サッカーの中盤に絶対必要な選手。
  • DMF:マニシェポルトガル)/アベレージの高いパフォーマンス。中盤から攻め上がる重要性を体現。
  • OMF:ピルロ(イタリア)/本職の位置ではないが。今大会は評価できるトップ下は存在しなかった。攻撃のタクトを振るい続けた安定感と存在感でデコをわずかに凌駕。
  • RMF:リベリー(フランス)/今大会でもっとも自分の価値を高めた選手だろう。90分あのパフォーマンスを出来るようになれば世界トップレベルの選手に。
  • LMF:マルダ(フランス)/リベリー共々フランスの躍進を支えた。リヨンも勿論ビッグクラブだが、国外のチャンピオンクラブでプレイできる選手
  • FW:クローゼ(ドイツ)/02年の後は一時期低迷していたが、昨年からパフォーマンスを飛躍的に向上させ、進化した姿を母国大会で見せた。完成度の高いトータルフォワード。

■セカンドチーム(4−4−2)

■サードチーム(3−4−3)

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