日本代表雑感。

 W杯の話題をブログでもtwitterでも全然してないですが、別名義のアカウントで毎日試合見ながらしゃべってたりして、こちらでは触れておりませんでした。一応、睡眠限界でスキップした数試合と、GL3戦目の同時刻開催ゲーム以外、全部オンタイムで見ております。今日は日本代表について。


 今大会が失敗か成功かで言えば間違いなく失敗、それも大失敗の部類に入るでしょうね。元々、日本代表がアウェーのW杯でベスト8以上に行く力はあるとはこれっぽちも思っていない私ですが、それでも決勝T進出は現実目標ですし、そこへ向けてどういったアプローチをしていくかで評価されるべきだと考えています。その点で間違っていたと思われるポイントをいくつか。

1)「日本のスタイルとはなんなのか」問題

 監督や主力選手が口々に言った「日本のサッカーを貫く」「日本のスタイルで挑戦する」というニュアンスの単語。そもそも、日本のスタイルとは何か、って誰にも説明できないのが、問題。ショートパスを回すサッカー? 怠惰な横パスをいくら繋いでポゼッションを上げても、サッカーにおける目標である「勝つ/負けない」「ゴールを奪う」ことに直接的には繋がっていきません。スペインの敗退も合わせ、パスサッカーの終焉なんて言いますが、当然ながらかの国と日本では次元が全く異なり。スペインのパスはゴールへ向かう手段で、日本のパスはパスを成功させるためのパス。そのパスですら、緊張感のない横パスやバックパスが散見され、トラップ技術が低いため際どいゾーンではほぼ勝負できない、など到底武器と言えるレベルではありませんでした。緊張感のあるパスを送り出せるのは、良い時の長谷部と遠藤と、あと直前で抜擢された青山だけ。青山のプレーには可能性を結構感じたのですが…。

 パスのためのパスサッカーでもアジアレベルでは通用していましたが、そもそもそこで通用することが本大会への何の保証になるのか。そのことに気付かない主力選手の「物差し」はいったいなんなのか。それが後で述べる2つ「アジア予選問題」と「主力の立ち位置問題」にもなります。


 今ひとつ、そこで不満なのが「日本のサッカーを貫く」ことは対戦相手のプレースタイルを研究して、それに対応することと同居できないのか、という問題。コートジボアール戦もギリシャ戦も、コロンビア戦も、局面局面での「ぶれ幅」はありましたが、基本的には日本チームは同じ戦い方をしてました。何故なんでしょうか。

 今大会、彼我の戦力を分析した上で日本代表が決勝Tへ行くにはシナリオはほぼ1つしかありませんでした。すなわち「コートジボアール相手に何とか勝ち点1、ギリシャに勝って、既に突破を決めたコロンビアからあわよくば勝ち点1」、それで合計勝ち点4か5で2位通過。そのために、初戦と第3戦、そして2戦目は全く違うアプローチがあるべきです。何故似たり寄ったりなのか。初戦を0で終えたのなら尚更2戦目は対ギリシャで勝ち点3を死にものぐるいでもぎ取る戦い方が必要でしたし、そこで1に終わって「99.9%終戦」した中でのコロンビア戦も、相手がメンバーを落としてくることは想定済みだったわけで、相手の組織が整うまでの前半45分で試合を決めるような覚悟とプレースタイルが必要だったはずです。結局は「日本のサッカーを貫いた」結果、無策に、無残に負けた今回の代表。ならば「日本のサッカー」は負けるためのサッカーってことになりませんか。せめてその負け際散り際に美しさがあれば、まだ良かったのですが、今大会はそれすら。夢を見たドイツ大会、地に這いつくばって現実を追った南アフリカ大会。その2大会から何を学んだのでしょうか。そうした継続性と反省のない「スタイル」を「貫く」ってなんでしょうか。


 さておき、日本のスタイルをイメージできる指導者と、それを共有できる選手、Jクラブ、協会、マスコミ、ファン。そうした環境がないと、あと何十年掛かっても世界に「日本のサッカーとは」というイメージを提示することは出来ません。そもそも、ドーハ以後、こんにちまで、日本のサッカーという形を明確にビジョンを持って提示してくれたのはオシムさんだけです。そういう意味ではJリーグ監督経験と海外の代表監督経験が両方あり、日本(のサッカー)が好きな指導者と巡り合うことが第一歩で、日本人監督には10年早いし、日本と縁のない監督を連れてきても点でしかなく線は繋がっていかない。ぱっと思いつくのは…フェリポンくらいですかね。無茶だな。ドゥンガ? ないよな。ミョンボさん? もっとない。ヴェンゲル? 論外。 ピクシー? もっと論外。ロシアをつなぎにしてその後のカタールで成功するよう、8年計画で、次の代表監督にJに来て貰うのが良いのかも。ギャラを考えたら、現実的ではないでしょうし、本人のモチベーションもあるでしょうが。

 代表チームはその国のリーグの延長線上になくてはいけません。海外でプレーする選手が増え、日本のサッカーというスタイルを主力が共有するこ利賀以前より困難になっている。その上をむなしく滑っていく冒頭の台詞。良くも悪くも、どんな状態でも韓国らしいサッカーをするお隣と比べると、日本の軸のなさ、土台のなさは明白で、悲しくなります。監督が替わる度寸断されほぼゼロからのチーム作りになる日本。次の4年間が、その先の8年に繋がるものであるように願いますし、そのための人事をしっかり行って欲しいところです。


2)「アジア予選ぬるすぎ」問題

 今大会で感じたのはアジアと本戦の圧倒的な温度差。これは2002年のアジア大会を境に、大会を経る毎に大きくなっていきます。興行的要因からアジア枠が増えて、結果としてアジア予選はそこそこの状態であれば突破できる、完全な消化試合に成り下がりました。確かにオーストラリアがアジア枠に来て本来ならば以前より競争が激化しているはずですし、中東や東南アジアの国々も以前ほど油断できる相手ではなくなっていますが、むしろそのことで時以降のチームがつぶし合いになり、加えて以前は強豪国だったサウジやなんかが微妙になっていて、今大会の4代表にとっては以前より楽になっているように思えます。


 アジア予選が低いチーム完成度でも突破できるから、そこでチーム作りの問題が出てこない。理想と現実のギャップが埋まらず本番に突入して、初めて現実に気付く。高いスポンサーマネーを払ってより一層ぬるま湯に浸けるだけのキリン関連ゲームの見直しも含め、もう少し緊張感を持って本番までの時間を過ごしたいものです。

 そのためには、日程の変わったアジア杯や、日本しか盛り上がってない五輪では不足。今大会、アジア代表が全チームグループ最下位という結果を受け、アジア全体として危機感を持って取り組むべき課題であると感じます。次から、興業面よりも現実のランクを重視して、アジア枠が削減されれば、それは日本にとってもアジア各国にとっても、最高の強化プランと言えるかもしれません。アジア枠は2.5〜3.5で良いんじゃないでしょうか。最終予選2組の各組首位がまず権利ゲット。2位同士がプレーオフして、そこの勝者がゲット&敗者が大陸間プレーオフへ、または勝者のみが大陸間プレーオフへ。どこかの局が嘘ついてる「絶対に負けられない戦い」がそこにある状態、早く復活して欲しいですねえ。


3)「主力の立ち位置問題」

 香川と本田という日本を代表するタレントが順当にステップアップした結果、かつては想像も付かなかったビッグクラブでプレーをしている今。でも、所属しているだけではプラスよりマイナスが大きい。暴論ではありますが、今の香川と本田の状況は、アーセナルの練習生同然だった稲本と大差ありません。ビッグクラブのお飾りより中堅クラブの主力。彼らがドルトムントとCSKAに所属したままだったら、あるいは決勝Tに進出できていたのかもしれません。

 そのくらい、特に本田の劣化は著しい。プレーの一つ一つを見ていると、今の低劣なミランですらスタメン確保できないのがよく分かります。ボールが経由すると速度が落ち、状況判断は悪く、トラップは粗雑、ボディコンタクトでバランスを崩しポジションを押し出されて、FKなんか入る気配もない。極端な話、今大会で日本が可能性を感じるプレーをしたのは、本田を囮に、彼を経由せずパスが回ったシーンが大半でした。ゴールを決めてなお、今大会の彼はゴージャズなピッチ上の飾り物に過ぎませんでした。状況としては06年の中田と被るところもありますが、彼は周囲との問題を抱えながらプレーでは日本でずば抜けたパフォーマンスで戦っていました。本田も全盛期はずば抜けたプレイヤーでしたが今や…。

 その本田を押しのけられないのが今の香川。彼のプレーは本田よりずっとマシなレベルでしたが、PAに入っていく良さを発揮するには、ポジショニングや周囲との連動が問題有りでした。輝きを放っても、それが継続する環境を与えられず、もぎ取れない。結果として、流れの中で有効な存在にはなり得ていませんでした。

 そしてこの2人以上に日本の武器で生命線とも言えるのが長友と岡崎の2人。しかし長友はギリシャ戦に代表されるように、豪快にサイドを突破するのは良いけどそこでアイデアが尽きて、極めて平凡なクロスを放るだけで相手には何の危機にもならず(抜ききれないコロンビア戦の方がずっと良いクロス上げてたのですから、不思議ですね)、ダイナモ岡崎は直前の体調不良が響いたのか、彼らしからぬ低調なパフォーマンスに終始。コロンビア戦のゴールは見事でしたが、後は全般、覇気に欠けるプレーぶりでした。


 4枚看板がそれぞれベストにほど遠い中、頑張っていたのはウッチー。彼もコンディション面は不安でしたが、相変わらず守備での不安はあるものの、機を見た攻撃参加は彼のベストのそれであり、海外組の中ではその存在感はトップレベルでした。でも彼はどちらかというと裏方。好調のチームにアクセントは加えられても、チームを牽引するタイプではありません。長谷部も同様。直前の不安を思えば非常に良いパフォーマンスでしたが、決定的な仕事は出来なかった(しなかった)。遠藤や吉田、今野といったザックジャパンのレギュラークラスも、彼らのベストパフォーマンスを100とするなら60点くらいの出来。なんで本番へ向け、ベストに近いパフォーマンスを発揮できないのか。発揮できないことが直前のテストマッチで見えていたのに、何故彼らが不動の軸であり続けたのか。3年11ヶ月(実際は途中からですが)のチーム作りをかなぐり捨てて急造ではあるものの、その時点のベストにシフトして本番に臨んだ前回大会の岡田ジャパン。その勇気がなく、ドイツの失敗を繰り返しただけ。それが今大会の日本でした。


 アンタッチャブルな主力がいること自体、私は反対ですが、いるならいるで、せめてパフォーマンスがベストではなくても、トップレベルのクラブで各国代表選手と練習から切磋琢磨してることを活かし、その「物差し」を代表チームに持ち込んで欲しい。マスコミやファンへ向けた強気の発言は良いですが、その裏で現実とのギャップをどのくらい感じ、どのくらいチームに提言していたのか。それが出来ない物差し選手は、ピッチ上のお荷物になる可能性があります。それが今大会、悪い方向に発揮されたのではないでしょうか。


 次の代表チームでは、まず本田はミランで居場所を確保するまでクラブに専念して帰ってくるな、香川は最悪の監督が来るので一刻も早い脱出を、逃げないならキャリアを左右する闘争の用意を、どのみち半年はクラブに専念。岡崎と長友には代表でのプレーを意識したクラブでの戦いを。年齢的には次の大会も十分主力な4人ですが、もっと彼らを脅かす存在と、パフォーマンス次第では安住できない環境が代表にも欲しいですね。

 ウッチーは引退なんて話もありますがもうちょっと頑張って欲しい。クラブのパフォーマンスが代表で出せないのは、彼のせいだけではありません。もっと主張して自分でその環境を勝ち取って欲しい。長谷部・遠藤は青山や山口に彼らのエッセンスを引き継ぐための半年1年を。CBは森重を中心に立て直し。GKも含め、今の形で行くのか、足元の良いGKや3バックも交えて変えていくのか。


 あとはFW。結局日本最高のFWである佐藤寿人は呼ばれないまま32歳。今がピークの大久保も同年代。ならば柿谷と大迫、彼らより若い世代の時代。彼らが海外に行ってどうなるかも大事ですが、彼らとフィットする中盤を作るのも一つ。完成したケーキの上にFWというイチゴを乗せるのではなく、最初からイチゴに合ったスポンジとクリームを。今大会で言えば、青山と柿谷の組み合わせは見てみたかった。それでトップ下に香川か大久保。。。


4)「でこの選手なんで選んだの」問題

 W杯はベンチも含めた総合力の戦い。予選で散ること前提なら、主力とその穴埋めでも良いですが、決勝Tでの戦いを視野に入れれば、ベンチのメンバーがどのくらい戦えるかが大事。エースFW候補のルカクを見限って更に若いオリジが活躍したベルギー。初戦スタメンじゃなかったガゴやラベッシがチームの風通しを良くしたアルゼンチン。あるいはベテランクローゼの一発で息を吹き返したドイツ。ベンチからでた選手は、その役割をはっきり意識して、短い時間でスタメン以上の働きをすることが絶対条件。それにより、スタメンの選手は次パフォーマンスを上げないと交代させられる、という危機意識を持つことが出来ます。


 日本のベンチはどうだったのか。コートジボアール戦ではルーティーンとしての長谷部→遠藤で、長谷部の不在を感じる後半のチームになり、ギリシャ戦では守備の要となりつつあった森重をベンチに回し、最後は世にも無様なパワープレー。コロンビア戦では果敢な縦パスで攻撃にダイナミズムをもたらしていた青山を下げ、山口を入れる全く謎の采配。結局交代選手のパフォーマンスも、そもそものスタメン選びも「?」ばかり残る3試合でした。

 中でも最悪だったのがギリシャ戦。相手が退場して、時間が過ぎていく中でザックが取った選択は青山投入でも柿谷投入でもなく、3バックにしてサイドを高い位置に上げるでもなく、まさかの吉田のパワープレー。高さが最大の武器であるギリシャに、数的不利を一番有効に使えないパワープレー! もうあの一場面で、ザッケローニという監督は無能である、と断言しても良いくらい、酷いシーンでした。


 更に問題なのが3枚目のカードを使わなかったこと。しかもそのカードに最適の選手がいたのも関わらず。そう、斎藤です。

 この選手はドリブルは見所あるモノの、逆に言うとドリブルしかない一点豪華主義のプレースタイルで、他の部分はプロとして並以下。通常の試合の流れでは存在のマイナスの方が大きく、到底スタメンでは使えないし、リードしている場面でも追いかける場面でもリスクがでかい。それでもこの選手が持ち味を発揮しそうなシチュエーションがあるとすれば、それはまさに、「同点で数的優位で、にもかかわらずピッチ上の選手の味では状況を打開できない状態」…つまりギリシャ戦の後半15分でした。その千載一遇の場面で投入するために、敢えてこの使い勝手の悪いドリブラーのプラス部分を大いに評価して、最後の1人に選んだ、はずです。にも関わらず、使わない。ザックはいったい何を想定して彼を選んだのか。今大会、最大の謎ですね。本人も相当ショックだったのではないでしょうか…。


 その他にも、展開力の無い伊野波を何故選んだのか(マルチロールだからだとは思いますが)。中村憲剛ではなく清武だった理由(わからん)。分からないことが多い。日本は実質15・6人で足りるチームでした。それはすなわち、決勝Tへ行くイメージのないチームってことですね。直前のテストマッチから通じて主力のパフォーマンスが低調だった以上、尚更選んだ選手を有効に使って欲しかった。


 …とまあ色々好きに書いてきましたが、結局は、

5)「代表チームは国民性の鏡」問題

 …なのでしょうね。渋谷で乱痴気騒ぎをする精神破綻者も、ただただ盲目にがんばれがんばれと声を涸らす人も、私も、みんなの総意が今の代表チームであり、日本のサッカー。アジアではほぼ無双、問題には向き合わずにお祭り騒ぎしたい、喉元過ぎたらネガティブな回顧はしたくない。そんな意識がああいうサッカーを生み出しています。我々1人1人が、単に勝った負けたではなく、この惨敗を機に、日本代表にどうあって欲しいのかをしっかり見つめ直す必要があります。その作業を怠る人が1人でも多ければ、その温度がマスコミに反映され、協会に反映され、代表チームに影響します。


 日本のあるべき姿。作るべきチーム。それをイメージできるかどうか。そこが現実的かどうかは余り関係ありません。自分の好きなサッカーがあって、それを日本に期待する、自分の好きなクラブの姿を投影する、好きな選手がとことん活きるチームにする。そのイメージが合って、実際の代表がそれと違う場合は、その違いを好意的に受け取れるか否か。そうした「目」をみんなで持って、「頑張れ」の言葉に色んなメッセージを詰めていきたいですね。


 私が好むのは今のチリやメヒコのサッカー。今のチリスタイルを作ったビエルサやその系譜、メヒコの伝統受け継ぐ監督に来て欲しい(出来れば彼らがJクラブ監督も経験しているとなおいいんですけど…)。で、そのイズムを、4年掛けてチームに植え付けて、同時に同じ指向性で4年後に監督になり得る日本人にアンダーカテゴリーを監督させつつ、2022年はその日本人を監督に据えるか、アシスタントにつけて継承したスタイルを。とにかく4年で捨てない「土台」を作るんだ、という確固たる方針で監督人事から、次のW杯、その次までを視野に協会には動いてほしい。極端な話、2022年に本気でベスト8狙えるチームスタイルが確立されれば、次のロシアは予選落ちでもいいと思うのです。「無駄に」大会に出ることは重要ではない。勿論方針と人選次第ではありますが(今のザックのチームを引き継ぐのであれば、来年早々のアジア杯優勝をノルマにして、ダメなら解雇するくらいのショートスパンで、そういう対応できる人を選びつつ、それまでに本命候補とじっくり交渉すればいい)、長い視野で我慢もしながら、日本のサッカーをみんなで作り上げていきたいですよね。

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