豪州戦。

 ケイヒルカッコイイなあ。闘をヘッドで潰したもんな。男だ。阿部ちゃん気の毒。2点とも、もの凄く悔いが残るだろうけど、誰が付いててもやられるよ、あれは。クリーンな意識の、日本人DFには絶対防げない進入の仕方をしている。ああいう失点を防ぐには、日本の後ろの方の選手がもっと外に出て行かなきゃ、ダメだ。もしくは、エメルソンのようなFWが全チームにいないと。そもそも論で言えば、同点じゃあ2位で終わるのに、1−1の段階で動かないベンチが悪い。勝つ気があるなら、同点ゴールの瞬間、橋本下げて興梠だろう。2点目を取る意志の無さ。それこそが、敗戦の最大の要因。どうしようもない。

 オーストラリアにとっては消化試合。日本にとっては、言い訳の余地を一杯残した上で、クリンチばっかりして引き分けて、「最善を尽くした」と言えさえすればいい試合。好ゲームになるはずはないのだが、得てして1軍の消化試合より、1軍半の試合が面白くなることはある。オーストラリアが先制したらワンサイドになったかも知れないが、ワンパンチで日本先制して、俄然面白くなった。ウズベク戦を10点とすると、カタール戦は0、今日は30点くらい。100点満点だけど。オーストラリアは60点くらいかな。

 しかし、オーストラリアと、日本の、力の差は歴然。勝てる気がしない。多分、オーストラリアの選手も、負ける気がしていないだろう。加えて、ベンチが劣っては勝てるはずがない。日本が、南アフリカで、宿願の1勝を手にするには、最後のチャンスだった。何故、「1位通過しなかったら監督の進退を検討する」というプレッシャーを掛けなかったのか。これで本番の結果は決まった。かなりの確率で、3連敗。運が良ければ2敗1分。希望は、潰えた。

 以下、例によってサッカーにあまり興味ない人、日本万歳な人は読まない方が良いでしょう。

 闘のヘッドは良かった。ヘッドに至る動きの質が極めて高かった。勿論、そこに合わせた憲剛も素晴らしい。それでも、豪州の壁を上から破ろうなんて発想、闘にしかできない。良い意味で、日本人の、アジア人の常識がない彼にしか。マイナスにもなり得る「地雷」だが、無論、起爆剤にもなる。

 山口智と槙野は、ここで使わなかったらいつ使うというのか? この試合で使われないのは、信頼されていないの一言に尽きる。2人は、岡田の下では二度と高いモチベーションを持てないだろう。それ以上に、阿部ちゃんと今野、このチームで最もユーティリティな選手を揃ってスタメンにする。限りなく、ベンチワークの幅を狭める自殺行為。まともな思考の持ち主には出来ない起用だ。

 今日のメンバーに関しては、特に2人に対して言いたいことがある。

 橋本。良い選手だ。好き嫌いで言うと好きな選手だ。だが、どうもこの選手に関しては誤解がある気がしてならない。「攻撃サッカーを底支えしてる縁の下の力持ち」「活かすタイプ」。実際は、決して活かすタイプではないし、そんなに周囲のケアは得意じゃないし。所属クラブの駒としては、完璧、かつ最高に機能しているタイプだが、代表のボランチ向きとは思えない。求められている役割はクラブで言う明神なのだろうが、彼は決して明神にはなれないし、なる必要もない。持ち味が活きるポジション、チームで機能すればそれで良い。それは岡田のチームにはない発想であり、無いポジション。一言で言うと勿体ないし、本人の評価のみならず、周りの選手の評価も下げてしまう部分がある。代表をG化する(Gの外人の役目を海外組にさせる)ならいいけど…。今のチームに限らず、代表レベルの中盤には、明神のような、または啓太のような選手が絶対必要だ。火消し役が中盤にいないチームは脆い。スペインのように圧倒的なスキルがあれば別だが。もしくは、アジアレベルで全ての伸び代を完結させるつもりなら、別だが。再度言うが、橋本は素晴らしい選手で、ただ、正しく使って貰えない代表では、不要。

 タマ。良い選手だ。好き嫌いで言うと…昔は好きだった。彼の良さは万能性。スピードがあり、運動量もあり、急所を突く思い切りもある。ただ、例えば達也あたりと比べると、岡田的な言い方をしたら「スイッチを押す」能力に欠けるし(タマの守備・チェイス・プレスは「ルーチンワーク」で、義務感は感じるが、そこから何かが生まれる可能性は感じない。達也は言うまでもなく、天性の嗅覚で、相手を嫌がらせる岡崎とも全然違う)、本格的なFWと比べるとエゴが足りない。決して「スコアラー」ではないし「シャドーストライカー」でもない。じゃあ何だ? タマはタマ。彼をチーム戦術に組み込んで、その為の動きを周囲が徹底しないと、存在価値がない。決して達也や大久保と比較検討されるような選手じゃないし、巻や矢野と比較検討される選手でもない。強いて言えば今なら岡崎だろう。岡崎とタマ。ここは二者択一。結論は(「今なら」という但し書きで)言うまでも無し。

 加茂時代は暗黒だったが、あの頃は未知への挑戦へのワクワク感と、壁を越える快感があった。トルシェは人間としては最低だと思うが、あのチームはテンションが上がった。ジーコは最後の1年でチーム作りの詰めを誤った(放棄した)が、アジアカップの壮絶な戦いは心を打った。オシムには、サッカーの面白さの全てが詰まっていた。

 対して岡田のチーム。なんの興奮もない。何の喜びも驚きもない。サッカーという競技の退屈な部分が全て詰まっている。サッカーの90分は、長い。この長さを楽しむにはコツが居る。岡田のチームにはそのコツが通用しない。油断すると寝そうになる。ダイジェスト向きの代表。リアルタイムで楽しむ意味のない代表。今、このチームを応援できるのは、滅私の精神で代表に寄り添う誓いを立てた「修行僧な」方々と、自己発電で興奮できるタイプ、言い換えれば「感動する自分に感動できるタイプ」くらいだろう。しかし、考えてみれば小学生の時にフランスW杯を見た人たちは今高校生〜大学生。(フランス・韓日の時の盛り上がりに対する)憧憬を、ヒマと情熱が一番ある時期に、それを投影すべきチームがこの様では、気の毒としか言いようがない。ある意味で最大の被害者は彼らだろう。空元気を、とても馬鹿にする気にはなれない。

 加茂が暗黒なら、岡田は「虚無」。闇は何かを生み出す余地があるが、無には何もない。岡田には何もない。空白の時間。必ず、10年後には忘れ去られるだろう。それで良いと思う。マイナスを引っ張るくらいなら、無かったことにしてしまえばいい。

 選手にとっては、キャリアのピークを無にされるのは気の毒なことだが、その選手にも問題がないわけではない。2006年のチームは、内部に歪みを抱えつつも、闘う心があった。闘う選手が居た。今のメンバーも内面には闘争心を秘めているだろうが、それを伝えるタイプじゃない選手が揃っている。中澤や闘には熱さがあるが、その熱はチーム全体には伝播していない。岡崎も同様。黄金世代〜アテネ世代にはどうにも熱量が足りない。抜群に巧いし、頭のいい選手は多いと思うのだが、「実力以上」を出す選手が居ない。強いて言えば稲本か…彼もトンネルでもがいているし。海外で踏ん張る姿勢は、安易に帰ってくる脆弱な子供よりずっと評価できるが…。稲本を使うには、勇気が要る。岡田にはその勇気はあるまい。ジーコが悪い、ヒデが悪い。そうやって「逃避してきた」選手は、今、そのツケを払いつつある。キャリアの画竜点睛を欠くのも、止む無しだろう。

 まあ、とにかく、気の毒なことだ。日本は「アジア」と「その先にあるサッカー」を分け隔てる壁の上に立っている。ここ10年ほど、ずっと。日本は、進んだつもりになっても、壁も一緒に動いていて、なおかつどんどん高くなっている。先に、壁を越えた韓国や、イランは、足を止めて、壁に潰されないよう、頑張っている。北朝鮮やサウジは、壁を越える冒険を続けている。日本は…飛び降りる勇気もなく、戻る事も出来ず。飛ぶ勇気もなく、壁の上で夢を語るのは、空しくも、恥ずかしい。仮に選手が、意を決して飛び降りても……彼らの首には「岡田」と書かれた鉄球が、鎖で繋がれている。鎖は、壁の高さよりずっと短い。死にたくなければ、一緒に壁の上でさえずり続けるしかない。鎖を外されることには、多くの選手の羽はすっかり萎えているだろう。

 北京世代がピークになるのが2014年。そこへ生き残る選手、北京組の成長、追い越す選手。彼らに注目して、あと1年を乗り切ろう。南アフリカ大会は一生に1度だが、我々サッカー好きには祭りは4年に1度やってくるのだ。94年以前のW杯は、日本が出て無くても楽しかったじゃないか。南アフリカ大会「そのもの」には楽しみがいっぱいある。同じアジアの中でも、韓国のグループがある。こちらは、日本・豪州のような「消化試合だらけのグループ」ではなく、最終予選から、ハイレベルな試合を経験して、底上げが出来ている。今日の試合も楽しみ。個人的には北朝鮮にW杯に行って欲しい。ただし「5位決定戦」「大陸プレーオフ」経由で。今のままのチームでは日本程度の期待しか持てないだろう。せっぱ詰まった状況で痺れるような試合を2つ。これでチームが大きく伸びる。韓国、イラン(を期待)、北朝鮮。この3チーム+オーストラリアなら、日本が下げる分の「アジアの意地」を保ってくれるだろう。欧州予選も最終局面。楽しみ!

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