驚いた。

ジャイアントキリングを起こす19の方法

ジャイアントキリングを起こす19の方法

 個人的にはこの手の「漫画を元にテキストベースの考察を起こした本」が嫌いなんですよね。重箱の隅的というか、それを知ったから面白いと言うより、知らなくても楽しいモノを押しつけることでかえって興醒めになる感じでしょうか。オタク趣味の悪いところを凝縮したような「悪行」感を覚えます。

 この本もそういったモノかと思いつつパラパラと書店で読んで、気がついたら買って帰っていました。いや、面白いです。

 ジャイキリ自体が、サッカー漫画としてはずば抜けた部分があるわけで。スポーツマンガとしてはスラムダンクと並んで「別格」じゃないかと思えるのは、やっぱりそのスポーツの良さを、実際のスポーツ映像以上に伝えられている所ですよね。スラムダンクより面白いバスケの試合は、日本にはありませんし、NBAでも年に1試合あるかないかです。ジャイキリの、しっかり描写した試合より面白いサッカーの試合はそうそうありません。Jリーグでは勿論、欧州のサッカーを見ていてもやっぱり月に1試合あったらラッキーですね(サッカーはバスケよりいっぱい見ることが出来ますからねえ)。

 質の高いサッカーノンフィクションはいっぱいありますが、この本は質の高いサッカーノンフィクションをベースにしたフィクションを更に元にした「セミ」ノンフィクションとでも言うべき本です。ジャイキリの逸話をベースに、実際のサッカーで起こりえる問題や、魅力を掘り下げる手法は、実話ベースではたどり着けない「わかりやすさ」があります。サッカーノンフィクションは、やっぱサッカーファンが見てナンボなんですよね。この本は、ジャイキリは好きだけどそんなにサッカー見てないよ、って人が見ても面白いんじゃないかと思います。そしてそういった人がこの本を減ることで、ジャイキリほど魅力が凝縮されていない実際のサッカーをより深く楽しめるようになるでしょう。勿論、サッカー好きにもお奨めしたいです。サッカーを取り巻く要素、選手・監督・スポンサー・サポーター・マスコミ、etc.…それらの要素を面白く読ませるというのは、相当難しいです。

 スポーツメディアに関わる人は、スポーツマンガをどこか軽視しているというか、下に見ているところがある気がしますが(勿論、面白いスポーツマンガは本当に少ないんですけどね…)、この本はそうした先入観を除いていくとそのスポーツにとってどんな幸せな未来が待っているかということを示唆してくれている気がします。時代にもマッチしていますが、野球界やバスケ界が望んで辿り着けなかった場所に、今のサッカーはあるんだなーと実感しますね。

 ともあれ、ジャイキリファンでエクストラとか買って読んでる人は、是非読んで欲しいですね。個人的にはこっちの方がずっと面白いです。続編とかやると、普通の俗悪な謎本になってしまいそうな気もしますし、ややくどい気もするので、これ一冊でいいやって感じがします。

 あと余談ですが、モーニングの公式ジャイキリの壁紙とか落とせたりしますよー。私もこれを実際に使ってます。

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