白眉のプルタルコス訳。

プルターク英雄伝 (潮文学ライブラリー)

プルターク英雄伝 (潮文学ライブラリー)

 最近、ギシリアに凝ってます。「エジプトはどうした?」と言われるかもしれません。そもそもギリシアもエジプトも、子供の頃から大好きだったのですが、エジプトはご存じの通り、数年前に旅行で行く機会を得まして。その際、かつて読んできた本の記憶から楽しむことが出来た部分と、「もっとちゃんと知っていればもっと楽しめるのに」と痛烈に後悔した部分がありまして。結果、旅行後、エジプトの本を読みあさっていたのですが、実際、私が次にエジプトへ行くのは数年後…下手したら一生涯で一度あるか無いかでしょう。

 ならば、もう一方のギリシアを、旅行行く前にいっぱしの知識身につくくらいまで「リハビリ」しておこうと思いましてね。いや、こっちも行く時期は決まっていないのですが、目標としては近5年以内に行きたいなあと考えています。その際、現地ガイドに頼らなくても見学できる程度の知識、バックボーンは得ておきたく。

 で、プルタルコスギリシアの本も20冊くらいや読みましたが、やっぱり「面白さ」で行くと、このお方とホメロス先生に集約されてしまう感が(素人考えとしては)ありますね。プルタルコスの本が面白いのは、単なる人物伝記ではなく、その人の人柄や、マイナス面もしっかり感じられるからこそ、偉大さが寄り浮き彫りになると言う、その描写の緻密さで。

 ただ、日本語になっているプルタルコスの本には私的な「欠点」が2つありまして。1つは、訳してる間にどこかに文才を起き捨ててしまった感のある「退屈な・義務的な」翻訳。もう1つは、古めの本が多いために読み進めるのに不自由なくらい「近代的でない」こと。名前は挙げませんが、この前に2冊入手したプルタルコスは、はっきり言って面白くはありませんでした。研究目的で読むならともかく、娯楽としては0点。

 そこでこの本。鶴見祐輔さんの訳は非常に文章として面白く、おそらくプルタルコスが書いたであろう、後の偉人が絶賛し、愛読書にしたであろうその「息吹」が感じられるように思います。非常に面白いです。

 この本にも問題はあって、1つは「傑作選」であること。アレクサンドロスカエサルテミストクレスなど、学校で歴史を習ったレベル+αのメジャーなラインナップしか楽しめない。これの元になった本は全8巻で存在するのですが、絶版で手に入りません(先日、神田でも捜索をしたものの見つからず)。もっと読みたい! もう一つは、タイトルの通り、人名地名が「英語読み」であること。カエサルがシーザーくらいはいいです。アテナイアテネ)は「アゼンス」。テーバイ(テーベ)に至っては「シーブス」。もう、何処だよそれ!

 ちょうど、私が受験生の時に「現地読みにしよう」と急に言われて、名前が変わって往生したのですが、それの逆行バージョン。勿論、「忠実に抜粋」したのだろうけど、現代日本を出すにあたって、名前を現地読みに変えるとか、せめて脚注を入れるとか、出来なかったものかな。

 そんな不満もありつつ、ここ最近読んだ本の中では抜群に面白い、まさに「白眉」の一冊でした。

 次は古本屋で買ってきたホメロスの諸神賛歌でも読みます。ギリシア関連で面白い本があったら、是非教えてください。ヌル読書好きなので、古文のテストのようなモノや、大学の論文みたいなのは無理です。娯楽色が強いのが良いなー。

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