大人になった「神の子」

 EUROファイナル。楽しい試合でした。

 この試合、サイドはドイツに、中央はスペインに分があると見ていたが、ヴィジャ不在で中盤を攻撃的な4枚にしたことで、深いサイドをケアしなくては行けなくなったドイツの攻撃の起点を削いだ格好。勿論、その分決定力は落ちるわけだが、中盤の4人は皆「第2のFW」としての意識が強く、誰一人王様然とした態度を取らない。バラックという「王様」が良くも悪くも居るドイツとの違い、アジアのチームの豪華と言われる中盤との違い。決定力不足がFWのせい、なんてのは時代遅れの思想。そんなこと言ってるから点が入らないんだよな。レベルの違い云々抜きに、この試合から何もインスパイアされなかったら、監督は余程バカだろう。今後のJ、代表が見物です。

 ドイツは予選から通じて良い試合と呼べるようなゲームをほとんどしていなかった。それで決勝に来たのはドイツらしいが、優勝するには色々足りないモノがあった。ドイツファンには悪いけど、ドイツのサッカーは、EURO全チームの中でも下から数えた方が早いレベル。監督の采配云々以前に切れるカードも乏しい。タレント頼みの限界。96年以降の「低迷期」のツケを払いきらないまま、半端に復活したことで余計「ドイツらしい強さ」から遠ざかった感じもある。一度落ちるか、特別な選手の登場を待つか。後者は厳しい気がするけどな。

 一方のスペインは、予選を圧倒して勝ち上がってきたW杯、以前のEUROと違って、ギリギリで予選超えたのが良かったかもね。チームにアンタッチャブルが無くなり、セナのような実用的な選手がチームに入ってこられたし、ベンチにいるスターが不満をあまり言わなくなった。これでスペインの時代が来る、とまでは思わないけど、このチームが成熟して(出来ればよりハイレベルな指導者が付いて。デルボスケは楽しみ)2年後にどんなサッカーしてくれるか。

 スペイン、負けたけどオランダ、ロシア。あとクロアチア。この辺のチームは2年後も多いに楽しみ。逆にここがピークだった感じのポルトガル、迷走中のフランス、見所乏しいドイツとイタリア辺りはどう立て直すか。2年はあっという間。

 以下、試合中メモ。
 スペインに先制して欲しいと願っていたらトーレスのゴール。ドイツの緩慢な(高いだけで全然上手くない)守備ラインを抜け出した素晴らしいゴール。あの局面で決められるようになったんだな、トーレス…。

 トーレスはずっと、スケールは大きいけどツメの甘いFWで「神の子」の渾名に相応しい「子供の選手」だったわけだが、1年、ベニテスの下で自信を付けたのは大きい。ヴィジャの大会になるはずだった今大会。最後はトーレスが試合に出られない彼の分も気持ちを込めたな。

 ドイツはとにかくポドルスキとラーム以外、このレベルに相応しい選手が居ない(ヒツルスベルガーとフリングスは良い選手だと思うが、どちらも影に咲くタイプだし)。バラックは勿論素晴らしい選手だが、再三言うとおり、心が2流。特に嫌なのが、守備に入った時の粗忽、かつえげつない当たり方。いつカードを貰ってもおかしくない選手。チームとしては心中しづらい。中心選手として信頼しづらい。惜しい。スペインの守備も決して超一流ではないが、この大会は集中力が高い。個ではなく集団で止める意識が強い。このまま行け。このまま。

 ポドルスキ孤軍奮闘。連動していく周囲の動きが単発だったり、質が低かったり。

 えーラームを見切った。もうドイツはポドルスキの技術しか頼るモノがない。あとはごり押しか。嫌な後半になりそう…。スペイン、もう1点取っちゃえ。

 中盤を彷徨うバラック。悲哀漂ってるな。なんか一発レッドになりそうな気配。

 少しドイツのリズム出てきた。スペインはガツガツ当たられても怯まずに前へ出ないと。

 アラゴネスの交代珍しく的確。セナの左右でドイツ起点作ってるもんな。

 終了。平凡な言葉だけど、正義は勝つって感じで。良いサッカーやったチームが勝つのは嬉しい。相手がポルトガル辺りだったらもっと良かったけどね。おめでとうスペイン!


 

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