お疲れ様でした。

5/7  引退
「先日のエコー検査において右前繋靭帯炎が確認されたことで、それ以降は治療を施しながら経過を観察してきました。本日、松田博資調教師が脚元の状態を確認されることになったので、それに先駆けて改めてより精密な検査を行ったところ、右前繋ぎの種子骨靭帯炎を併発していることが判明しました。繋靭帯炎に加えて、種子骨靭帯炎を発症しているとなると、復帰までにかなりの期間を要する公算が高く、快方に向かったとしても損傷の度合いから再発する可能性は極めて高いという状況です。また、仮に復帰できたとしてもこの馬本来のパフォーマンスを披露できるか正直なところ難しいと言わざるを得ないところもあるかもしれません。実際に松田調教師には検査結果を確認いただき、そのうえで患部をチェックしてもらいましたが、やはり難しいだろうとの見解でした。獣医師の所見、そして調教師の見解を元にクラブと相談させていただき、大変申し訳ございませんが、ここで現役を引退させていただくことになりました。今後は繁殖牝馬として第2の馬生を送ることになりますが、母を超えるような仔を生み出してもらいたいですし、我々もそれに向けて尽力していければと思っています」(早来担当者)「過去に扱ったベガの血を引く馬だけに、牧場で初めて見させていただいた時から期待で胸が膨らみましたし、何とか大成させてあげたいとも思っていました。デビュー戦、新潟2歳S、桜花賞はこちらの期待に十分応えてくれる走りを見せてくれましたが、同世代の牝馬相手の阪神ジュベナイルフィリーズオークスは僅差で取りこぼしてしまい、何とも悔しい思いをしたものです。しかし、完調とは言えない中で古馬チャンピオンを撃破した札幌記念は、この馬の能力を再認識しましたし、3歳秋以降は、世界でもトップクラスの競走に挑ませていただきました。頂点にこそ立てなかったものの、この馬にとって最高のチャレンジができたのは間違いありません。最初に脚元の症状を聞いた段階では何とか現役を続けさせてあげて、応援いただいている会員の皆様にもう一度、本当のハープの走りをご覧いただきたいと思っていましたが、今日実際に脚元を確認させていただいたところ思っていたよりも芳しくない状態でした。これ以上無理をして何かあったら、それこそ皆様に申し訳ないことをしてしまうだけでなく、何よりハープに申し訳ないことになってしまいます。牝馬だけにこれから大事な仕事が残されていますし、ハープのためにはここで現役生活に終止符を打つことが最善と判断しました。競走馬としての馬生を全うさせてあげられなかったことには大変申し訳なく思っております」(松田博師)デビュー戦快勝から挑んだ新潟2歳Sで見せた残り1ハロンの飛ぶような走りは、後世に語り継がれるほど脳裏に焼き付く凄まじいものでした。G?勝利は桜花賞の1つに留まることになってしまいましたが、世界を驚かせたロンシャン競馬場で大外を真一文字に伸びる姿、4コーナーで致命的な不利を受けながら懸命に追い上げたジャパンカップ等々、記憶に深く刻まれる走りを幾度も我々の前で披露してくれました。その能力をもってすれば…と復帰を断念したくない気持ちは、クラブ、調教師、牧場ともに強くあり、それ故慎重に脚元の状態を見極めてきました。しかし、新たに判明した種子骨靭帯炎の存在を考えると復帰までの道程は想像以上に険しいものになることが想定され、また仮に状態が改善されたとしても再発の可能性は高く、それを断念せざるを得ない状況です。名牝系の血を繋いでいく、もうひとつの大きな仕事が待っていることも併せ考え、松田博資調教師と協議を行った結果、ここで現役続行を断念し、競走馬登録を抹消することとなりました。会員の皆様にはまことに残念なことと存じますが、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。なお、本馬に出資されている会員の方へは追って書面を持ちましてご案内いたします。

 残念としか言いようがないですけど、無事に繁殖入りできたことは良しとしなければですね。前回のクラブ更新で、99%覚悟はしていましたので、ショックはほとんど無いです。ただ、残念なだけ…。

 桜花賞までは、輝かしい未来を信じて常にワクワクしてレースを見ていましたが、オークスの落鉄から以降は、心のどこかに「次の競馬で大変なことが起こるのでは」という不安があったのは否めません。ジャパンカップも一歩間違えば大事故。2度の海外遠征でも何が起こってもおかしくはありませんでした。思えば、馬は京都記念の走りでSOSを出していたかも知れませんね。同時期(オークス後)から、ハープスターは出資者のためではなく日本競馬の夢を叶えるための「公的な馬」に祭り上げられてしまい、私も自分の出資馬という気持ちは日に日に薄れ、どこか人の馬のような気持ちもありました。前走で漸く、夢の時間が終わり、ここからはハープスターという馬と出資者のための止まっていた時計が漸く動き出す、という矢先ではありました。でも、それでも、ヴィクトリアマイルの直線で「何か」が起こるよりは、これで良かったのだと思います。そう思うしかありません。

 無事なら後どれだけ稼げただろう、と考えると悔しさが拭いきれませんが、この馬で新潟2歳Sを勝つまでは重賞はおろかOP勝ちすら縁のない私が、遠くまで連れてきて貰いました。JCと並んで日本で一番好きなG1、桜花賞を勝て、凱旋門賞とドバイという、夢のようなステージまで味あわせてくれました。この両方に遠征した馬ってハープスターヴィクトワールピサしか居ないんですよね。勿論、現実的に国内で走っていれば、とは今でも思いますけど、かけがえのない経験が出来たことは事実です。凱旋門賞パドックを歩くハープスターの姿には本当に涙が出た。そこには純粋に感謝。

 新潟2歳Sの衝撃。格が違いすぎたチューリップ賞。暴力的とも言える競馬振りの桜花賞。最強古馬の庭で底知れぬ可能性を感じさせた札幌記念。この馬にとって4つのタイトルは少なすぎると言えば少なすぎますが、そのどれもが、今後毎年、そのレースが来る度にリプレイの1番目2番目に出るような競馬。記憶に残る名馬、という意味ではトップレベルの一頭と言って良いかもしれないですよね。

 関係者の中ではブエナ以上と評されてもいましたが、真の実力は分からず終いとなりました。私は結果が全てなので、前述の通り「G1・1勝馬としては破格の強さだった」という感じですが、まあ、今後も世間の評価は分かれるでしょうね。答えはその人の中にあればいいと思います。願わくば、子供がデビューして競馬場で活躍することで、再び母の評価が上がるような日が来ると良いですね。


 母として牧場へ帰るハープスターですが、ぶっちゃけ、子供は一口募集ではなくセレクトに出てくれないかな、と思っています。単純に自分が買えない(買わない)値段だろうってのもありますし、夢の続きはクラブ馬としてではなく、その夢を共有できる個人馬主と突き進んで欲しい。ハープの子供となれば、必然的に期待のハードルは高くなりすぎますし、純粋に出資者としての楽しみが味わえる気は余りしません。私は「元・母の出資者」として距離を置いて応援したい気持ちが強いです。



 ハープスター、お疲れ様。良いお母さんになってね。

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