きりた史ベスト10RPG・2位

 あと2つ〜。

オーディンスフィア

オーディンスフィア

 比較的最近のゲームで、ここ数年プレイした中では総合的にずば抜けていました。

 テーマは北欧神話で、ヴァルキリープロファイルと共通する部分も。あちらは英雄譚・群像劇なのに対し、こちらは「叙事詩」。その分、やや芝居がかっていて人間味のない欠ける部分もあるが、キャラクター個々の掘り下げは申し分なし。片方のシナリオでの脇役が、他方のシナリオでは主役になっていたり、片方のシナリオで起きた事件、起こした事件が、他方のシナリオに大きな影響を与えていたり。原則として一本道ながら、視点が複合的に移動させられることで、窮屈感は全くないし、オムニバス的でありながら、相互補完が完璧なのでくどさも淡泊さもない。こんなゲームやったことがない(同じ試みのゲームは多いけど、消化レベルが段違い)。

 ストーリーそのものも、大仰すぎず小さすぎず。「自分個人の利害がどんどん世界の命運に組み込まれていく」さまが実にスムーズに描かれている。1・3位のゲームは圧倒的な物語力で魅せ付けるタイプだが、同じやり方では超えるのは至難。このゲームをVPの上に置いたのは、VPなどと違う手法で、VPと同じくらい面白いストーリーにしてくれたから。むしろVP2よりVPらしいから。とにかく構成力が卓抜。その点においては個人的にはコンシューマ史上ナンバーワンと言いきって良い。

 システムも個人的にしっくり。アクションベースだが、無駄なコマンド入力などを要求する自己陶酔系のアクションではなく、所謂「ガチャ押し系」のアクション。それでも、タイミングなどを工夫することで被害が小さくなり、効率が良くなる。マップが綺麗で、単調さと無縁なので、飛び回る楽しさは破格。野菜を掘ってボトルを育てるアイテムシステムは楽しいし、フォゾン吸収の爽快感とままならなさ、ボーナスや種育て、料理など、とにかく飽きない。それぞれ、程々無視しても良いし、使いこなせば楽しく、楽だし、「強制的ではない」部分が多いのが好感持てる。作業を作業としてクリアまでずっと楽しめるバランスと工夫も凄い。

 音楽はオウガチームが手を入れている。何処までも雰囲気を盛り上げるための脇役に徹した音で、同時に、アクションゲームとしての操作の阻害もしないようにしている。このゲームは結構「音」が大事なので、音が聞こえ無くならないよう、それで居てそこに存在が不可欠なBGMを作るのはなかなか大変なこと。これはこれで大変レベルが高い仕事。サウンドトラック向きじゃないBGM。これもゲーム音楽の醍醐味。流石だ。

 舞台仕掛けが何処か演劇的(会話は意図的にそうしているし、イベントの見せ方も操作キャラクター視点ではなく、傍観者であるプレイヤーの視点を軸に徹底して作られている)なので、ボイスも効果的。くどいようだけど私は「RPGにボイスは不要」派だが、オーディンスフィアはボイスがイベントの深みを出している。少なくとも邪魔にはなっていない。これは私のようなタイプのプレイヤーにとっては最大級の賛辞。それも、役者の質云々ではなく、徹底した品質管理の賜物だろう。勘違いされがちだが、良い音声は上手い声優ではなく良い脚本と演出のみが産みだし得る。声優は楽器に過ぎない。素晴らしい楽器も演者が使いこなせなければ意味がないし、一個だけ飛び抜けた楽器の混ざったオーケストラは、完成度の低いものにしかならない。アニメと同じ感覚で、代表作でゲーム声優を語るのは違うと私は思う。

 何と言っても、ゲーム全体に「暖かみ」がある。現代クリエイターの、ポリゴンで金掛けました〜、という連中には到底たどり着けない、労力が込められている。新しいモノをアナログっぽく魅せるのは、アナログだけだった時代の10倍労力とセンス・ポリシーが必要。プリンセスクラウンから10年。佳作の域を出ないゲームだったのが、良くもここまで進化を遂げたものだ。そして、良くもここまで汚れずにいてくれたものだ。ヴァニラスタッフには心からの敬意を。ペルソナをオタク媚びゲーに貶めたアトラスに受け皿としての感謝を。環境破壊云々言い出して本末転倒し出す前のジブリ作品、デジタルメディアの存在しない頃に図書館で読んだ本。そんなモノに通ずる丁寧で古風で、優しい作り。今の「消費者」に徹しているゲームユーザーの一人でも多くに、このゲームをプレイして欲しい。特に、小中学生ゲーマーと、「ゲームなんて」と言っている、元ゲーム好きの大人に。

 本当はこのゲームが1位なんだ。1位の作品は、「殿堂」なのです。2位が1位。そう思ってください。

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