なるほどね。

■チェルシーが見せた“弱者のサッカー”。NUMBER.web

 この記事で杉山さんがしている、監督の分類というのはとてもよく分かる。
 例えばヴェンゲルは日本人の中で「稀代の名将」と言われているけど、選手の人心掌握という点に於いて、確かにそれは間違いないけど、試合中の采配の面では正直そんなに優れているとは思えないのですよね。特に日本向きとは思えない。流れの節目(川が二股に分かれてるイメージ)でどちらのルートを選ぶか采配はするけど、自ら、流れを新しい方角へ導くことはしない人、という感じ。今、レッズを指揮しているオジェック(節目すら見えてないか、無視してる感)、そして前任のギド(こちらは単純に経験値が足りないためも)もそうでしょう。オシムは完全にモウリーニョとかのサイド。どちらかというと、日々の練習を経て選手を感化していくタイプでクラブ向きだし、代表なら長期政権向き。モウリーニョヒディンクは短期政権向き。ベニテスは両者の中間だろうか。

 モウリーニョ然り、ベニテス然り。私の好きな監督は、この「柔軟性」を持っていることが条件だと、今回の記事でまた気付かされた。「王者のサッカー」というのは聞こえが良いけど、そこにおける監督の役割はセレクションの責任者に過ぎず、90分のゲームでサイドラインを経てピッチに与える影響力が乏しいのは否めない。1つの采配、選手交代によってピッチの景色が激変するのがサッカーというスポーツの醍醐味だし、それが出来る、それをしようと志す指導者に私は惹かれる。レッズの指揮官がそういうタイプの人だったら、私は優勝しなくても満足出来る自信がある。「レッズ強いね」といわれることより「レッズのサッカーって面白いね」と言われたい。ここ5年くらいでレッズも強豪の顔を持つようになったけど「(エメルソン)ズルイよ」とか「強いね!」と言われたことはあっても、面白いサッカーと言われたことはない。今はやっぱジェフと、トリニータ、良い時の名古屋、かなあ。

 杉山さんという人の武器は、単純にサッカーの知識ではなく(杉山さんが優れているのはライブの感覚を磨き続けていることと、日本人のサッカー観が右向けば左、と、常に「金になる報道対象」以外を求めているところ)、その知識を、興味を持つ受け手に対し発進する能力、すなわちライターとしてのセンスに恵まれているところでしょう。多分知識と経験だったら後藤さんとかの方が上でしょうが、後藤さんの文章は大学教授とかのそれであって、学ぶ意志のあるマニアにはとても良い教材ですが、エンタテイメントの配信者としては堅すぎるし、組み立てが事務的すぎる。センスにおぼれ、自分のオマージュ作品を量産し続ける(し続けた)カネコタツヒトみたいな人も居ますが、杉山さんはなんとなく、上手く立ち位置を調整しながら、自己流を貫いてますよねえ。好きです。

 まあ、ともあれ。最終的な結論というか、言いたいことはCLのベスト4。日本ではミランマンUの方が注目されるでしょうが、絶対面白いのはチェルシーリバプールですよ、と。ミランマンUの試合にはライブの興味がまるで沸かない。ダイジェストで見れば十分。個人技以外のサプライズは怒らない確信が持てる。モウリーニョベニテスのバトルは相当興味深い。

 あとは馳星周がもっとサッカー報道にタッチしてくれればな。当たり前だが、文のセンスという点でサッカーライター畑の人とは格が違う。同じ物書きでもドラえ…じゃなく村上龍あたりとも違う。

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