ユーゴ90・ドイツ戦。

 今日の代表スタメンを見た時には強烈な違和感を覚えた。俊輔、憲剛、ヤットと、「出し手」を並べて、受け手が高原しかいない。普通に考えて、機能しづらいメンバー。何故オシムはこんなスタメンにしたのか。
 一つの試合を思い出した。表題の。当時、母国(旧ユーゴ)のマスコミから、自国出身の選手を使えと圧力をかけ続けられたオシムは、大事なW杯の初戦で、しかも優勝候補の一角、ドイツを迎えての試合で、サヴィチェビッチやスシッチ・ストイコビッチらの「ファンタジスタ系」を並べて、大会で最強の守備力を誇るドイツに挑んだ。結果は1−4。サヴィチェビッチギド・ブッフバルトに付かれて存在感がゼロになったのに象徴されるように、前線のファンタジスタは存在感を示せなかった。この試合は、オシムが母国のマスコミを黙らせるために「お前らの希望通りのチームで戦うとこうなるぞ」と示した、言わばわざと負けた試合と言われている。

 アジア杯を前に、オシムが「俊輔と憲剛を同時に使うとこうなるよ」と示した、と考えるのは邪推だろうか。彼ら2人だけではなく、俊輔が入ったことで、中盤の流れは大きく淀んだ。マークはガタガタで、攻撃でもタッチ数とキープの時間が長くなるばかり。稲本は、飛び出す動きに片鱗を見せたモノの、守備者としては国内組の鈴木や今野、阿部らに及ばないことをまた実感させもした。

 後半、試合間隔の短い、しかもアウェイのコロンビアがガクっと足が止まることを、オシムは長野の試合で察知したのではないか。だから前半は「サポーター・マスコミ向けのメンバー」で臨み、後半は勝つためのメンバーを徐々に入れていく。前半不在だった「受け手」としての羽生。この選手を、今日のメンバー・相手でスタメン起用しない理由が思い浮かばない。「わざと使わなかった」。最初からオシムは前半は捨てるつもりだった、と考えるのは穿ちすぎだろうか。結果論かも知れないが。後半14分の流れは素晴らしかった。結果は0−0だったけど、モンテネグロ戦より見所は多かった。良い試合だった。

 あくまで推測なので、アジア杯のメンバーを見てみないと分からない。憲剛は攻撃面では及第点・守備と運動量は合格。ヤットは、ファンタジスタ系と組むことで、完全に脇役に成り下がってしまう悪癖をまた露呈した(無論ヤットが悪いのではない)。稲本は余り進化していないように思えた。このメンバーと組んだ啓太は、負担が大きすぎて死にそうな顔をしていた。そして俊輔は一時期の中田のような「空気の差」を感じさせた。アジア杯で、この中盤がどうなるか。楽しみであり、怖くもあり。誰がサヴィチェビッチで、誰がピクシーなのか。オシムの目で、日本の誇る才能がこうして分類されていく様は、この上なく楽しい。単なる好き嫌い論、戦術論ではなく、先に右肩上がりの完成図がぼんやり見え隠れするからだ。オフト以降、一度も感じたことのない進境だ。

 正直、この試合で啓太が使われることには少しショックだった。啓太は重要な選手だが、そこまで酷使しなくても、代わりはいるのではないかと。でもこの試合で、オシムは啓太にカタネツの役割を任せている、任せたいと思っていることが、少し見えた気がする。つまり、これからも啓太は怪我でもない限り、休ませてもらえまい。信頼の証として掛かる責任は重い。レッズでも勿論替えの居ない選手。今年、とんでもない試合数をこなして、健康を保った時、啓太はもう一ランク上の選手に生まれ変わりそうな気がする。その理想型に近いのは(プレイスタイルが)啓太より今野だと思うが、オシムが啓太を使い続けるということは…そういうことなんだろう。今野は、今のところ便利使いしかされていない。啓太との評価には大きな差がある。だが、実力に差があるわけではない。啓太は今、大チャンスであり、ピンチでもある。どうなるか。

 後半バテてたとは言え、厳しいプレーを90分続けてくれたコロンビアにも感謝。空いてるスペースを見つける目の確かさで、日本のプレスの甘さを露呈させてくれた。コパを控えて、こんな僻地で良く「ちゃんと」戦ってくれた。この国はこれからまた強くなる気がする。

 CBの阿部は最高。レッズでも使わない理由は無い改めて確信。中田コもやっぱ良いバランス感覚をしている。

 しかし川平のわめきと松木の媚びは相変わらずげんなりしたが、それ以上に試合中に俊輔と憲剛を平然と「中村」とコールし続けたセルジオと角澤の無神経さに改めて驚いた。本当にダメだなこいつら…。是非北斗も代表入りして困らせようw

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