ラジアントヒストリア。

 クリア。期待以上の良作でした。

ラジアントヒストリア(特典なし)

ラジアントヒストリア(特典なし)

 大好きだったゲーム、ラジアータストーリーズ(きりた史上ベスト10RPGでも7位に挙げています)のスタッフが作った新作と言うことで、様々な期待をしたのですが、ある意味期待以上、ある意味予想外でした。

 ラジアータは壮大な実験作。あの当時としても画期的なゲームの作り方で、それを高いレベルで実現していました。そのスタッフだけに、どんな要素を盛り込んでくるかと思いましたが。ゲームとしては極めてオーソドックスなRPG。昨今の捻りすぎ・蛇足が多すぎ・肝心のストーリーがキャラ依存で弱すぎ・演出過剰で本筋見失いがち・やり込み要素を要求されすぎて、本筋がしょっぽいゲームとは何線も画した、余計な装飾で一切誤魔化すことのないベーシックな面白さ。それだけにバランスは要求されますが、非常に安定したシステムとゲームバランス、蛇足感のないストーリーで非常に良作。

 そんなオーソドックスなゲームの中で大きなポイントになっているのが「時間移動」のシステム。失敗した世界を、過去に遡って、「あそこでこうしたら」という分岐点を選びながら、徐々に一本だけ通す細い正解へ繋いでいくのだが、この手法はあまたのゲームが挑戦して、失敗してきた本当にある種の鬼門といっても良いジャンル。失敗のパターンとしては、システムに走りすぎてゲームとしての魅力が足りないケース。設定が先走って全然ゲームの面白さとして活かされていないケース。あとは、急激に大振りなストーリーになって、ユーザーとの一体感を欠くエゴ見えケース。数少ない「成功に近い例」としてサガフロンティア2を挙げたいが、あのゲームの場合「サガシリーズ好きな人じゃないと耐えられない」部分が多かったように思う。

 その中で、ラジアントが非常にベーシックなシステム、オーソドックスなRPGの紀行の中にこの設定・システムを乗せ、破綻していないどころかそれがゲームの面白さに繋がっているのは画期的。ラジアータの実験に続き、この難題を合格点遙か超える点数でクリアして見せた、このスタッフのポテンシャルには本当に敬服する。そして心から尊敬する。これから歴史改変・時間移動ゲームを作る人は、絶対このタイトルを避けて通れないだろう。数年後、このジャンルの金字塔といわれていてもまったく驚かないし、これを上回るゲームが出てきたときは「ラジアントヒストリアというゲームは数年前にこれに匹敵するレベルの物を出していた」と声高に叫びたい。

 ストーリー面ではやや残念な部分も。これはラジアータにも言えたが、あまり本筋の付け方は上手くない。ここは今のゲームメーカーでも平均点レベル以下と言ってしまって良い。今作の場合、(以下ネタバレ反転)序盤からラスボスであるハイスの存在が見えていて、それがユーザーにも簡単に分かる割に、ハイスが絡んでくるシーンや、暗躍する姿の描写が少なく、絡みが足りない。そのため、終盤の展開に強引さを感じてしまうし、世界の秘密を知っている人間達の行動があまりに抑制されていて、「え、知っててあそこでその行動取るかな?」という疑問が多く残る。どうせ大きく2パターンに設定を分けるのであれば、片方はハイスと完全に一体化して動くルートにして、ハイスサイドの動きをもっと濃密に見せれば良かったのではないか。2ルートの違いが表裏ではなく、スタートで分かれた別の枝に過ぎないのは、ゲームの深みで考えたときとても惜しい。どっちも表なんですよね、結局。ラジアータでも人間編と妖精編で一応の裏表を描けていたわけだし…。つい最近までTオウガという、ルート分岐の超名作をやっていただけに、余計そう感じる。結果、主人公であるストック以外のキャラクターが希薄。主人公が安定しているだけに惜しい。これはラジアータの真逆で、どっちかを取ればどっちかが凹むのかなあ、と惜しく感じる。まあ、ラジアータとはディレクターも違うし、一緒こたに語るべきじゃないのかも知れないけど。敵役も色々残念。特にグランオルグの悪党コンビは、なんなのさという雑な処分のされ方。本当になんなのさ。ホント、ゲームにおけるキャラクターメイキング能力って、敵方の作り方と扱いで顕著に出るなあと痛感します。言い方悪いですが、主人公チームなんて誰にでも合格点のパーティーは作れるんですよね。サンプルは山ほどあるから。敵役は、設定を濃く反映した部分だし、立ちはだかる壁としての高さ・強靱さと魅力を持っていなくてはいけないし、越えたときの達成感を感じる存在でもなくてはいけない。今日日の敵役は簡単に排除できたり、勝手に潰れたり、何ならすぐ改心したり。なんか、流行なのかも知れないけど、「まあ、キャラクターだけに頼って手抜き仕事してるなあ」と思わざるを得ない作品がいっぱいありますね。

 ともあれ、今固定ハードのRPGが「もう終わった」と言っても良い壊滅的状態の中(勿論、良作は数多ありますよ。でも傑作は2・3年に1本あれば万々歳だし、大傑作はもう生まれないと思いますね…)、携帯ハードで世界樹セブンスドラゴン、DQ9(これは分母が多いだけにちょっと別物だけど)、今作のように傑作RPGが定期的に出てくれることは、RPG特化型のゲーマーである私にとっては本当に救いだ。3DSも発売されたが、どうかハードの機能に溺れることなく、地に足の付いた作品作りを続けて欲しい。

 点数は9点。0.5点はストーリー部分で、あと0.5点はゲーム音楽好きでもある身としては、音楽(BGM)面でインパクトを感じなかったため。古代サウンドのような、ある種「温故知新」的良さ以外は、DSでは難しいのかな…。下村さんの音楽は、パラサイトイヴが好きです。あとは申し訳ないけど、今作も含め印象に残っていない。綺麗な音楽ではあるんですけどね…。

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