セブンスドラゴン

 クリア。以下ネタバレ有りの感想。

 結構プレイ中に小出しにしちゃったのですが(「game」項目でソートしてください)、とにかく、良くもこのご時世にこのゲームを作ったというしかない。スタッフには本当に頭が下がる。

 世界樹がもてはやされた隠因の一つは「3Dダンジョンだった」ということにあると思うのですよね。具体的には、3Dという「敷居」があることで、マグロユーザーが敬遠してくれた。ある程度、素養のある人(3Dダンジョン探索に伴う面倒さを楽しそうと思える人)しか買わないから、評判は良い側に偏る。

 セブンスドラゴンは2Dになったことにより、その「敷居」を下げた。下げてしまったからこそ、楽しむ「努力」をしないタイプのユーザーが一杯手を出して、結果、文句を言う。だから、世界樹よりトータルの評判はマイナスよりに傾いている。

 これは完全に世界樹です。更に言えば、良くできた世界樹です。難易度の低さを、フロワロによる障害と、チキンレース性によって補っており、世界樹より創意工夫を要求しない割に、緊張感を失わないようになっている。レールに乗せないと、世界観に浸れないユーザーは、この自由度に戸惑ったり、不親切さを感じるだろうが、自由に見えて、実際は「やるべき事の優先順位を付ける」だけで、そんな自由でもない。逆に、その辺が、例えばロマサガとかと比べると窮屈なくらいだが、今の時代にやれる限界ギリギリまで攻めたとは言って良いだろう。

 成長するにつれ、クラス毎の相性が先頭の効率を良くさせるクラス/スキルシステムもなかなか良くできている。クエストも豊富で楽しい。個人的には、この倍くらいあると嬉しいけど、そうすると、自由度が高いので、本筋見失っちゃうユーザーも増えるだろうし。

 世界樹同様、音楽とビジュアルは、ゲームの「フレーバー」としての役割を完璧に果たしている。邪魔にならず、存在を失うほど弱くもない。古式ゆかしいバランス。最近は、音とビジュアルが過剰に主張しすぎる嫌いがある(音重視派の私は嬉しい面もありますが)。逆に言うと、音とビジュアルに頼りきりで(あとは「シナリオ」と名乗る、名ばかりの「シチュエーション」)「面白いゲーム」としてのエネルギーが弱くても、そこそこ通用してしまう市場が形成されている。だからこそ、ゲーム性の部分を解放した、「ロールプレイングゲーム」としてのオンラインゲームがここまで隆盛を誇るし、売れるゲームを作るには、過剰な装飾に無駄なお金を掛けなければいけない。全部無駄だとは言いませんけど、それらが、ゲームとしての面白さを補ってくれるかというと、そんなことは決してない。DSの良いところは、そうした無駄な装飾から縁遠いところで、だからこそ、他のハードより面白いゲームが生まれる土壌がある。世界樹セブンスドラゴンはDSで出したからこそ成功して、DSじゃなければ産まれ得ないゲーム。過剰演出のないモノを「古くさい」と言うならば、それはその通りだが、限られたエネルギーを何処に注ぐかで、中身に注ぐことを否定しては、この業界、未来がない。

 世界樹や、セブンスドラゴンに励まされるゲームクリエイターは多いはず。好き嫌いを別にして、このゲームをやって「ああ、いいなあ」と感じられない作り手は嫌だ。5年後10年後、ゲーム史を振り返った時に「世界樹セブンスドラゴンがあったから、ゲーム業界は末期の恐竜時代にならずに済んだ」と言われているかも知れない。そのくらいの価値を感じる。特に、世界樹以上に、セブンスドラゴンに、それを強く感じる。改めて、今、この時代にこのゲームを送り出したスタッフに、心からの敬意と感謝を。

 売りの一つ? だった「倍速バトル」が何の意味もなかった点が、若干残念だが、トータルの満足度を考えれば、些細な問題。このチームの、これからの活躍にも願いを込めて、久々の10点満点です。私の長いゲーマー人生で4本目(タクティクスオウガヴァルキリープロファイルオーディンスフィア/本作)。過去の3本とは性格が違う。3本は、その時代の「最高峰」であったり、「頭二つ抜けたゲーム」だった。セブンスドラゴンは「ゲーム業界の目を覚ます気付け薬」。作り手だけじゃなく、ユーザーも。古いんじゃない。今だからこそ出す意味があるゲーム。それに、気付く人が、業界内外に一人でも多くいて欲しい。

 セブンスドラゴンが気付かせてくれたもの。それは「点取り屋だけが選手じゃない」ということ。今のゲーム業界は、ストライカー(ゴール)ばかりが評価されている。正確には、ディフェンダーボランチが「点取り屋としての価値」で評価されてしまっている。勿論作り手も悪いが、メディアや取り次ぎが寄ってたかって作り出した大艦巨砲主義時代。ユーザーは、それに流されてしまっているだけ。FWだけのチームが機能しないように、大作だけの業界に発展はない。サイドバックとして優れた資質を持っている選手を、無理にストライカーにコンバートする必要もないし、本人も目指す必要はない。11のポジションのバランスが取れたチーム。ゲーム業界もそこを目指すべきだ。FWをずらりと並べたチームが2部に落ちた後、犯人探しをしても、誰も得をしません。みんなが、楽をしようとせず、「あるべきチーム」を追求していかないと。ユーザーはサポーター。サポーターにはフロントを動かす力があります。サポーターが望めば、ですが。世界樹セブンスドラゴンをイレギュラーにしてはいけない。そう思いますね。

 その分、次回作以降は厳しく見ます。世界樹がサガ、セブンスがロマサガ1。ロマサガ2を心待ちにする。続編は作りやすそうなゲームですが、また違う見せ方をして欲しいなあと期待します。

 次はー……すぐやるゲーム無いので、どうしようかなー。面白いゲーム無いか、情報集めよう。

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